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地域医療と福祉のトピックス その36

 

高校生に教える介護の技

-北海道からの報告-

保健婦 日比野和子

 

北海道十勝の中札内村(なかさつないむら)に家族で移住して、6度目の冬を迎えています。中札内村は、十勝平野の南西に位置し、日高山系のふもとにある人口約5千人の村で、日高や大雪の山並をバックに、まっすぐに続く落葉松や白樺の林、果てしなく広がるじゃがいもやビートの畑、牧場、と北海道らしい景観のところです。

ここで臨時の保健婦として近隣市町村の健診、リハビリ教室、介護保険関連の仕事に携わっていますが、昨年より隣りの更別村(さらべつむら)にある農業高校のホームヘルパー2級養成課程で授業の一部を受け持っています。高校でのホームヘルパー養成講座についてご紹介いたしましょう。

 

道内での実施状況は

北海道立更別農業高校では、平成9年度に選択課程としてホームヘルパー3級コースを導入しました。十勝管内では他に普通高校が1校、北海道内では数校が取り入れています。また平成11年度からは、ホームヘルパー2級コースへと拡充しています。カリキュラムは厚生省の定めるところに従って、2年生からスタートし、講義、実習は栄養士の資格をもつ家庭科教諭、介護福祉士、保健婦が担当しています。施設実習は村の社会福祉協議会が行なっているデイサービス、訪問入浴を含む訪問介護で行ない、また、近隣の市町村にある特別養護老人ホームでも、夏休みを利用して行なっています。

平成11年度は女子14名、男子3名の合わせて17名が受講しました。将来福祉関係の道へという、はっきりとした目標をもって選択した生徒は若干名で、多くは簿記○級の資格を取得するのと同じような感覚で選択しているようです。しかし、選択する生徒の数は年々増加しています。

 

初心にかえって

二十数年前にLPCの健康教育サービスセンターでホームケアアソシエイトの講座を担当していた時は、主に主婦が対象で、受講生の皆様の熱意に、こちらがエネルギーをいただいて頑張ることができました。しかし、今回は高校生が対象です。高校生になるわが娘から学校生活の様子を聞くにつけ、どのような授業になるか不安でした。とにかく興味をもつことができるように、実践での話や経験談をまじえて、なるべく具体的に話をするようにしました。血圧測定の実習で聴診器の話をした時、初めて自分の心臓の音を聴いて大さわぎしている生徒たちのうれしそうな顔をみていて、はるか昔の看護学生だった自分を思い出したり、始まってみると楽しんで授業をしています。しかし主婦と違って、高校生では経験したこともなく、ましてや見たり聞いたりしたこともないような介護の現場を話や教科書の上だけで理解してもらうことはなかなか困難で、ビデオやスライドなどの教材の必要性を痛感しています。

選択課程修了と同時に、ホームヘルパー2級の資格が取得できますが、卒業後すぐに福祉関係の仕事に就職することはほとんどありません。雇用側の年齢制限が20歳以上となっているので、福祉関係の専門学校、短大に進学するか、会社に就職して、その年齢になるまで待つという方法をとることになります。今後も興味を持ち続けて、どのような分野に進んでも、ここで学んだことを生かしてほしいと思いますし、いつも最後の授業でそう話しています。

 

 

 

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