日本財団 図書館


訪問介護ステーション千代田から28]

 

訪問看護の喜び

訪問看護婦 池田洋子

新しい年を迎えました。いよいよ21世紀です。2000年の4月に開始された介護保険も2年目を迎えます。昨年は新しい介護保険制度の中で訪問看護とケアプランの作成、それに付随する事務業務に追われる1年で、新しい制度の中で看護を提供することに精一杯でした。しかしこれからは質を問われる時代です。当ステーションのある千代田区でもサービスの向上と質の評価を考え、そのための会議がはじまっています。ステーション千代田も技術的にも精神的にも安心して在宅療養していただけるサービスを提供していくことが、今後の課題と考えています。

私は昨年2月から12月まで、月1回開かれた訪問看護婦現任教育というプログラムに参加しました。これは東京都にあるステーションが所属する東京訪問看護ステーション連絡会の主催する研修会です。訪問看護婦としてのステップアップとよりよい看護のために勉強したくてこの研修会に応募し、幸いにも受講のチャンスをいただきました。この研修会には都内のステーションから30名ほどの看護婦が参加し、それぞれが希望するテーマごとにグループワークを行い、その結果を発表するというものでした。10回の間にはグループワークばかりでなく、訪問看護に関する知識を学ぶ講演会なども開かれました。講演会は、訪問看護の歴史や、看護婦としてのステップアップ、家族支援のあり方などどれも興味深く勉強になるものでしたが、私にとってもっとも大きな学びになったのはターミナルケアをテーマとしたグループワークです。テーマに沿った参考文献を読み、その読書会を開き、事例検討を行い、時にはテーマに関連した映画鑑賞もありました。事例検討を通して自分の行った看護を振り返り、何がよくて何が悪かったのかを考えたことは大きな学びになりました。

看護の仕事は病む人とそのご家族に向きあうことですから、楽なことばかりではありません。けれども単に看護という技を提供するばかりではなく、患者さんやそのご家族の生き方から、学ぶことが多いのです。しかし病棟で勤務していたときは業務に追われ、一人ひとりの患者さんに十分に向き合うことができませんでした。一人の患者さんとお話をしていても、頭の中はいつも次の業務を考えていなければならず、このことは私にとってとてもジレンマとなりました。

一方、訪問看護婦の仕事というのは、安心して在宅療養をしていただけるというご利用者との信頼感からはじまります。そのためには、看護の技を提供するだけではなく一人ひとりと向きあう人間的な関わりが求められます。このことは厳しい面もありますが、私自身の励みにもなりますし、訪問看護婦としてのやりがいでもあります。今回の研修ではいわばケアの本質というものについて考えることができました。この学びを今後の看護に生かしていくことが私の課題でもあり、ステーションにとって必要なことと考えています。

訪問看護の仕事は、一人ひとりがその技と心を磨いていくことで、ご利用者によりよいケアを提供していけるのだと思います。

そして、常に他のステーションや医療機関と連携をとり、すべてのステーションが質の高いケアを提供していくことで、ご本人の望む在宅ケアが実現され、根づいていくのだと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION