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訪問看護ステーション千代田から25]

 

『後進の育成にも心をこめて』

訪問看護婦 池田洋子

ステーション千代田では、今年も5月から学生の実習指導を受け入れています。学生は看護学生ばかりでなく、介護福祉士をめざす学生もいます。毎年8月を除く5月から12月まで、6校から計50名ほどの学生が順番にステーションに実習にきます。1日に受け入れられるのは1〜2名の学生で、実習期間は2日〜5日間です。この日程はそれぞれの学校のカリキュラムによって異なります。学生実習が始まるとステーションでもその受け入れ準備におおわらわです。

 

緊張の実習第1日目

まず日程にあわせて、学生の訪問予定を組み、それぞれのご家庭に学生を同行したいこととそのご了解を得ます。各学校から実習目標などを記した実習要項が配布されますので、あらかじめそれを読んでおきます。さあ、実習の第1日目が始まります。学生は期待と緊張でステーションにやってきています。

私たちも初心に戻って、まずどの学生にも最初はオリエンテーションを行います。その内容はLPCにおけるステーション千代田の役割、ステーションの概要、訪問内容とその件数、千代田における利用者の特徴、医療保険と介護保険について、またケアマネージャーの役割などについてで、これを1時間くらいかけて、質問などを交えながら説明しています。このときに必ず学生に在宅療養についてのイメージやこの実習でぜひ学びたいことなどを聞くようにしています。学校からの実習目標はありますが、学生個々でも学びたい希望を持っていることがあり、私達はできるだけ、その希望をかなえた実習をしてもらいたいと思うからです。

 

同行訪問は学びの宝庫

オリエンテーションが終わると、いよいよ訪問にいきます。訪問では学生は見学することもありますが、なるべくバイタルサインを測定したり、ナースと一緒にケアをしてもらいます。学生でも行えることはたくさんあります。これらのケアを通して看護の実際や、在宅で利用者の方がどのような介護サービスを受けているのか、ご家族がどのように介護されているのかを学生に学んでもらいます。

実習の最終日には反省会を持ちます。この反省会では反省ばかりではなく、振り返りをしたり、学生からの質問を受けたりします。学生の話を聞いているとこちらが考えていた以上にさまざまなことを学んでいることに気がつきます。私たちナースも学生と訪問することによって刺激を受け、たくさんのことを学びます。決して指導をするだけではなくこちらが学びを受けることも多いのです。

学生は看護技術の基本的なことや、ご利用者やご家族との関わり、地域での在宅サービスを支える職種との連携、とくに病棟とは違うご利用者の生活や笑顔、ご家族のご利用者に対する思いや看護の姿に大きく感動して実習を終えていきます。先日はある一人の学生が、ご利用者と二人きりになったとき、笑顔で話していただいた体験をうれしそうに報告してくれました。

 

反省会の最後に学生に実習を終えての感想を聞くと、実習前に思っていた在宅のイメージが大きく膨らみ、肯定的なものに変化していることに気づきます。中には将来は訪問看護に関わりたいと希望する学生もでてきます。看護婦の道はさまざまです。臨床ナース、保健婦、教育者、研究者あらゆる道がありますが、たとえ訪問看護婦にならなくても訪問看護実習で学んだことが学生達の今後に役立つなら、私達にとってもうれしいことです。

訪問看護婦はご利用者に看護を提供することは最も大切な仕事ですが、実習指導のように後進を育成することも大切な一つの仕事と考えています。今後も学生の実習指導も受け入れ、私達も共に成長していきたいと願っています。

 

 

 

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