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訪問看護ステーション干代田から22]

 

女学校時代の音楽好きな心に戻ったIさん94歳

所長 片山蘭子

前回ご紹介したIさんの訪問から2ヵ月が過ぎました。介護と仕事の両立に疲れはじめた娘さんが「※註1葉っぱのフレディ・ヘルパーセンターのヘルパーさんに来ていただけませんか」というお電話が入りました。それを契機に、週1回の訪問看護に加えて、週2回のヘルパーサービスを開始し、両者の協働が始まりました。

Iさんは人の心を見抜く力が鋭い方です。ヘルパーさんがうかがって、すぐに信頼関係を得ることができるかどうか心配していました。ところが、葉っぱのフレディのMヘルパーとは、すぐに信頼関係が築けました。なぜでしょうか。

Mさんは、初めての訪問で、Iさんが昔は音楽の勉強をされていて、楽譜も読まれることを知りました。2回目の訪問の時、Iさんのお好きなCDをかけて、家事援助の仕事をしました。そして3回目の訪問の時には、得意なハーモニカを持参し「浜辺の歌」などを演奏しました。Iさんはじっと最後まで聞いてくださり、Mさんが「下手でごめんなさい」というと、「あなたは下手でも心がこもっているよ」とほめてくれたそうです。

それまでのIさんは、一人娘さんが仕事に出かけると不安状態になり、時には大声を出されることもありました。けれどもこの演奏をきっかけに、忘れかけていた女学校時代の音楽の世界に引き戻され、次第に心が安定してきました。

ナースは週に1回、1時間程度の訪問で健康のチェックやIさんの訴えを傾聴し、看護リハビリによって、少しでも自立し、ご自分らしい生活が送れるように看護を行っています。しかし、94歳のIさんにとっては、今更一人で外出したり、娘さんと海外旅行ができるはずもないと諦め、リハビリにも積極的になれずにいたようです。そんなIさんにMさんの介護は、音楽をよみがえらせ、心に灯をともしたように元気づけることができました。

ナースとヘルパーが協働して身体面、心理面のケアをすることは、患者さんを全人的に把握し、問題点をより的確にとらえ、問題解決をスムーズにすることに繋がります。さらにこの共働作業によって、情報の量が増え統一されたケアの提供ができ、それは患者さんへのケアの質の向上となり、一方、ナースとヘルパー自身の力量も向上できることに気づきました。

 

(註1)葉っぱのフレディ・ヘルパーセンターとは

『葉っぱのフレディ・ヘルパーセンター』には、LPCのホームヘルパー養成研修2級課程を修了されたヘルパー約30名が登録されています。

この不思議な名前の命名は、LPC理事長の日野原重明先生です。『葉っぱのフレディいのちの旅』という絵本を読まれた方は多いと思いますが、1冊の童話です。フレディという名前の楓の葉っぱが主人公で、生と死の循環を優しく表現され、子供たちばかりか多くの大人たちに読まれ、ベストセラーになりました。

日野原先生もこの童話を愛され、いままでに何回となく講演の中で引用されています。『葉っぱのフレディ・ヘルパーセンター』は、これから始まる新しい在宅看護・介護の時代に、心のケアを大切に考えたヘルパーセンターです。

 

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