ホスピスニュース
2000.4 No.167
財団法人ライフ・プランニング・センター
ピースハウスホスピス
〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1
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只管(しかん)ということ
私はピースハウスへ来て以来、三度めの花の季節を迎えています。最近思うのは、自分はここへ来てからいったい何ができているのか、ホスピスの医師として相応しい姿に少しは近づきつつあるのかということです。
以前一般の病院に勤務していた頃は、診療とは疾患を治癒もしくは軽快に導くための行為であり、その時点で医学的に正しいとされる方法を良心に従って施していたのです。疾患が治癒するか軽快し、患者さんに喜ばれ感謝されることにより、私たちはやりがいを感じていました。ところが治癒や軽快を追求することが、必ずしも患者さんの利益にならない場合があるということも少なからず経験しました。そして思うところあってホスピス医の道を選択したのですが、医師として全く患者さんを治癒もしくは軽快に導くことができないというのは、やはり率直なところたいへん苦しいことです。
澤木興道著「禅談」に次のような一節があります。「ただ坐りさえすればそこに道がある。単に坐るというだけではなく、人の世話をしてもただ世話する。『あれを世話すると、恩に着てくれるから世話する』とか、世話の仕甲斐があるから面倒見るのではない。そんなこと言わなくても、甲斐があっても無くても、ただ世話するのである。」
曹洞禅では、ただ坐るというところに深い道理があるとされます(只管打坐)。澤木興道は生涯にわたり寺に住することのなかった孤高の禅者でしたが、人間の痛みや悲しみを、その底まで味わい尽くした人のみが持つことができるであろうところの、独特の暖かさがあり、濃やかな心遣いがあったといいます。この文章を読んで私は一喝をくらったような気持ちになりました。それまでの自分の料簡が何とせまかったことか。ややもすると私たちは仕事のやりがいを求めがちです。しかしそんなことでは患者さんに申し訳ない。生死の重大な局面にある患者さんにとって、やりがいがあるから世話をされる、やりがいがないから世話をされないというのではたまったものではありません。私にとっては、ただ医師として与えられた務めを果たすということに真理があるのだと思います。「ただひたすら」、すなわち「只管」ということを大切に考えたいのです。
ピースハウスホスピス医師 大高正裕
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2月のご寄付
個人 石井薫 井上芳恵 加藤泰子 菅野博 曽我万里子 田中茂子 西村統子 矢根治郎
団体 秦野教会婦人会
シャトル便 ホスピスサポートチーム
お振り込み先
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加入者名 (財)ライフ・プランニング・センター
ピース・ハウス募金口
2月の新入会
はなみずき 遠藤加津子
お名前は五十音順にて紹介させていただきました。
99年度(1999年4月〜2000年3月)
2月の募金額 71万5,000円
2月の募金件数 9件
99年度募金総額 1,634万9,061円