日本財団 図書館


ホスピスでは、身体の症状を取り除き、こころに平安を与えるために取り組みます。死が間近になるまで、患者さんの希望や考えによりそって、話したり、食べたり、笑ったり、散歩したり、音楽を聴いたりすること、つまり普通の生活がおくられるようにスタッフはサポートします。症状が安定すれば、住み慣れた自宅にいったん戻ることもできます。

何かをしなければならないのでもなく、何をしたらいけないということもありません。ピースハウスを利用する方の意思が何よりも尊重されます。必要なものはちょっと声を発するだけで、できるだけ早くそれが提供できるようにと、スタッフは心がけます。

死は別れであって、消え去ることではありません。懐かしい思い出として、亡くなられる方の姿はくっきりと残る人たちの胸に刻みこまれていくのです。

 

●いくつもの別れ、残された無数の思い出●

 

ピースハウスでは、毎年150人前後の患者さんを迎え、見送ってきました。

一人一人に、その人だけのいのちの証しが残されています。

最後のパフォーマンスとしてチェロのリサイタルを実現されたAさん、お嬢さんの二十歳(はたち)の晴れ着姿を見て満足されたBさん、家族との和解を果たしたCさん、信仰にこころの平安をとり戻されたDさん…思い出には限りがないほど、一人一人が私たちに崇高な人間像を刻み込んでいかれました。

死を身近に感じること、死を常に思うことが、いまを生きることであり、意味ある生き方を求める道に通じていきます。

 

 

 

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