こうしてもとの病気(肺炎や骨折など)が治ったときには寝たきりや痴呆化して家庭に帰れない状態になっています。このようなわけで、高齢者の急性疾患治療に介護体制を整えることは緊急の課題なのです。
このような実態に不安をもつ、家族はいざという時に入院させてもらえると思って大病院の外来に通ったり、複数の専門医にかかるのですが、それは時問と労力の大いなる浪費です。益することも少ない。必要なのは身近な主治医です。それも大病院より開業医のほうがいい。大勢の患者さんに混じって待たされる病院は高齢者や痴呆の方には向いていません。主治医の外来日が決まっていて急変したときには連絡がとれないこともあります。その点では身近な開業医はかかりやすく、連絡をとりやすいし、家族の生活や歴史などを知っています。そういう関係があれば本人や家族の考えをわかっているので、いざという時にそれに則した対応をしてくれます。入院が必要な場合には病院を紹介してくれるはずですし、自宅で看取る方針であれば往診などで支えてくれるでしょう。
6) その時はその時のこと
もう一つつけ加えると、在宅介護をしている家族は生真面目で万一の事態にも備えようとする人が多い。しかし老いに対してこのように考えるとあらゆる病気や事故などを想定しなければならず、おまけに自分が倒れたらということまで心配になります。その多くは実際には起きないにもかかわらず、不安なために準備しようとする。私は、明るい展望はもてないことを先回りしてあれこれ悩むより、開き直って“なるようになる”と思うほうがいいと考えています。