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それは当然であり、周りから頑張りましょうと激励するのは家族の精神的な負担になります。介護できなくなったら施設や病院に頼むことも選択肢の一つだということで、迷っている家族を支えることが大切です。迷うのは当然なのです。

介護は看病と違って時間の制限がない営為です。長く続けるには、頑張らない、全力投球しないことが肝要です。

ボランティアとして週1回特養に行って入所者の介護をしている女性がいました。それに対して、自分の親を自宅で介護していればよいのに、そのためにヘルパーの派遣を頼むのはおかしいという意見が出されました。しかし私は、彼女がボランティア活動をするのは大切なことだと思います。彼女は自分でできるボランティア活動として特養の介護を選んだのです。家での一対一の関係から解放され、ほかのボランティアやスタッフと接する外に開かれた時間なのです。

外に開かれる必要があるのは高齢者も同様です。麻痺や痴呆が生じると自由に外出できなくなり、人間関係も狭まります。デイサービスは介護者の負担を軽くする目的と、もう一つ高齢者にとって家以外の世界をもつという意味があります。むろんそういう場所が嫌いな人には強制できませんが、人嫌いと思われていた人が意外にも喜んで通うという事例は少なくないので、散歩がてらに立ち寄ってみるような工夫は無駄にはなりません。介護は家族だけで抱え込んでいるのでなく、地域や社会が支える社会を創ることが必要な時代です。

 

5) 医療との連携

訪問看護やホームヘルプでは医療のサポートは不可欠ですが、この関係がなかなかむずかしい。医療者の間でも病診連携(病院と診療所という意味)の必要性が語られますが、実際には絵に描いたようにはいっていません。医師は御し難い。

 

 

 

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