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本来、食事指導は患者さんの生活に則してされるべきですが、しばしばマニュアルに頼りがちです。そして真面目な医療関係者は熱心なあまり生活全体を医学的な管理下に置こうとしますが、慢性疾患に急性期のモデルを当てはめないほうがいいのです。医療スタッフは前に立って旗を振るのでなく、患者さんや家族の後ろからついていき、援助を求められたときにさっと手を差し延べるスタンスが大切です。

また、最近はボケ予防や要介護予防といったかけ声でさまざまな訓練やリハビリが家で生活している高齢者の方たちや家族に持ち込まれる傾向がありますが、家族は介護で生活を縛られている上に、訓練やリハビリまでしなければならなくなっています。リハビリが必要なら家でなくデイケアやデイサービスですることです。患者さんにとって家はくつろぎの場のはずなのに、おちおち休んでいられず新たな苦痛を持ち込まれることにもなります。

家で生活することは、トイレに行く、食事に起きてくる、散歩や買い物に出るというような生活行動が自然とリハビリになるのであり、さりげないかかわりこそが最良のリハビリになるのです。

 

4) 家族を支える

介護は生活の一部であって、すべてではありません。家族が仕事を続ける、趣味のサークルやボランティア活動に参加することは、介護を続けていく上で大きな意味があります。むろん要介護度が進んで仕事を続けるか、施設に頼むか、あるいは仕事をやめて家で介護するかの選択を迫られることも生じ得ます。このような場合に在宅介護や在宅医療が最善だというように目的化しないことです。彼らの生活の中でできることをしているのであって、それがむずかしくなったらその時点で考える。介護している家族はその段階で大いに悩み、迷います。

 

 

 

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