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「このことについては上司と相談する」とそのまま書いてもよいと思います。そして、上司が相談にのってくれなければ、それはその上司の責任です。上司のいうようにやってよくない結果が出れば、それは実行した当事者と上司との2人の責任になります。すべてのことに責任をもって対処し、その真実を伝えること、すなわちaccountabilityには透明性が命となります。ボストン大学のアンナス教授は"to tell the truth"ということをとくに強調しています。

 

患者へのインフォームド・コンセント

 

さて、真実を患者に話すとき、不確実なこと(uncertainty)は患者に言うべきではありません。それはいたずらに患者を不安に陥れることになります。不確実な事実や不確実な診断や治療など、曖昧なことを口にするのは控えるべきです。アメリカの医療事故の専門家は、「真実を語り、こちらに誤りがあれば率直にあやまること」が医療の賠償についてもいちばん経済的な行為だといっています。医療者に不利なことを隠すという行為がかえって不利を増強させるのです。良心的にやるということが医療事故に対処する上でも最上の手段であることをよく覚えていてほしいと思います。

20年ほど前に、私は、「POSとは、患者や家族(クライアント)の全人的ケアを目指して、患者のために、患者の側に立って、患者とともに、知識と身につけた技術をもって、命の主体である患者にヒューマンなケアを実践するパラダイムであり、哲学である」と述べましたが、インフォームド・コンセントの原則もこれにのっとって行われることだと考えます

 

 

 

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