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子どもは自我の発達に伴ってその年代に合った自立を求めるようになります。大体、6歳までに自立の基本ができあがります。自立を求めていくということは、新しい社会へチャレンジしていくことでもあります。たとえば、赤ちゃんがはいはいできるようになると、親の手を振り切っていろいろなところに行こうとします。そして、触ってみたり、なめてみたりすることを通して、新しい世界を知りかつ広げていきます。

1歳が過ぎる頃には歩くことができるようになりますが、はいはいしかできなかった世界とは比べられないほどの広い世界を体験するようになります。つまり、親から離れて何かをしょうとして新しい世界を体験すればするほど、失敗も多くなり、苦痛も多く体験するようになります。この苦痛を体験することで自分の限界を体験的に学習し、偽りの万能感ではなく、正しい自立の範囲を定められるような基礎ができるのです。

しかし日本の場合、6歳まではむしろ子どもだから何もわからないという前提で子育てをするために、どうしても甘やかして過保護になったり、あるいは過干渉になったりで、失敗するのを事前に防ぐような接し方をしてしまい、自立の基礎が築かれないことが多いように思われます。その結果、思春期になっても、親に過度に依存して自分では何でもできるという偽りの万能感に浸り、わがままになって親も苦労しなければならなくなるのです。親に対して罵声を浴びせるなどの行動は、まさに偽りの万能感を支えている親が受ける結果といっても言いすぎではないかもしれません。しかし、このようなメカニズムに気づいている親はほとんどいません。

 

 

 

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