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また、責任の伴わない自由のもうひとつはギャンブルです。最近は、ギャンブルの問題を抱えてカウンセリングを求める方々もかなりいます。多くの場合、本人が望んで来るのではなく、家族が無理に連れてきます。ギャンブルをしている人は、「自分の楽しみなのに何が悪いのか」という思いでギャンブルを繰り返しています。はじめは、「誰にも迷惑をかけない」というのですが、ギャンブルを続けていけばどういう結果になるかということは自明のことですが、ギャンブルをしている人はほとんど自分のした行動の結果(借金など)に対して責任をとることは不可能です。つまり、責任のない自由を主張して無責任な行動を繰り返すのです。これが、自己充足的な生き方をしている人の姿です。

このような自己充足を別の言葉では、「偽りの万能感」ともいうことができます。“自分は何でもできるという思い込み”のことですが、これは自己充足と同じ意味にとっていいでしょう。そのような思い込みをもっていると、無責任な自由を主張し、行動をとってしまうのです。たとえば、警察や官庁の不祥事等は、典型的な偽りの万能感からくる無責任な行動です。あるいは、家庭などでの例をあげるなら、「お茶!」といえば、すぐにおいしいお茶が出たり、「飯!」といえば、ただちに温かい食事が食べられるという思いで生活しているなら、おそらく偽りの万能感に浸っているといってよいでしょう。もちろん、そのような環境を提供している誰かがいるのですが、その方々も自立はしていません。

 

自己過信

第2は、自己充足は「自己過信」という形で現れてきます。自分の能力や体力の限界がわかっていないということです。

 

 

 

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