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別紙(2)-2

商船(コンテナ船)による二酸化炭素観測

気象庁 気候・海洋気象部 海洋課汚染分析センター

 

1. はじめに

地球温暖化は人類が直面している地球環境問題のひとつとして、社会的に大きな関心を集めています。ここでいう地球温暖化とは、化石燃料の消費や森林の伐採などの人間活動によって、大気中で二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが増加することにより、地上付近の気温が上昇する現象を指しています。

これまでの研究によると、人間活動により放出された二酸化炭素のうち、大気中に残るのは約半分で、約3割は海洋に吸収されていると言われています。しかし、海洋が吸収しているとされる二酸化炭素の量には、大きな不確実性が含まれています。それは、海域や季節によって、ある海域では吸収し、別の海域では放出しているなど、海洋が一様に大気から二酸化炭素を吸収しているわけではなく、海洋全体での吸収量の見積もりが困難なためです。また、このまま海洋に二酸化炭素が蓄積された場合に、将来も海洋が現在と同様に二酸化炭素を吸収できるかどうかは、明らかではありません。

このため、大気中の二酸化炭素が増加することによる気温上昇や、これに伴う海面水位の変動、降水量の変化などの気候変動を精度良く予測するためには、大気と海洋間の二酸化炭素交換量の見積もりを、全ての海域で季節変化を含めてより正確に求めなければなりません。大気と海洋間の二酸化炭素交換量は、表面海水と海上大気の二酸化炭素濃度の差(正確には二酸化炭素分圧差)と海上風の速度でほぼ決まっています。つまり、広い海域における表面海水と海上大気の二酸化炭素等のモニタリングを高頻度で行うことが、正確な見積もりには必要となります。また、海洋に吸収された二酸化炭素の蓄積量を監視するためには、同一海域での観測を長期間継続することが必要です。しかし、そのようなモニタリングの例は少なく、日本では気象庁が西部北太平洋で20年近く継続している観測が唯一のものです。

海洋観測を行うプラットフォームとしては、船舶、ブイ、人工衛星などがあります。広い海域を高頻度でカバーできる人工衛星は、海洋表面の観測に対しては有効ですが、海水中の二酸化炭素を測るセンサーはまだ開発されていません。このため、海洋での二酸化炭素の観測は船舶あるいはブイにより現場で測定を行うことになります。海洋観測船は高い精度で海面から深層にわたる観測を行うことができますが、広い海域を高頻度でカバーすることは困難です。また、プイは定点での連続観測が可能ですが、広い海域をカバーするためには、多数のブイを配置する必要があります。

海洋の二酸化炭素モニタリングを行う上で、観測船やブイではカバーできない海域の観測には、一般商船の協力による観測が有効となります。特に、大洋を横断する定期航路で運航されている商船での測定は、広い海域を繰り返し、また長期間にわたって観測することができるため、このモニタリングに最適と言えます。

本報告では、北太平洋を横断する定期コンテナ船の協力により海洋の二酸化炭素観測を行っている例を紹介します。

 

 

 

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