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5.2.1 大気の二酸化炭素濃度の変動

大気中の二酸化炭素濃度は、全海域にわたり春に高く、夏に低い傾向がある。北半球では冬から春、夏と季節が変化していくと、陸上植物が芽吹き、また成長していく過程において活発な光合成が行われる。その結果として、大気中の二酸化炭素が植物に吸収されていき、大気中の二酸化炭素濃度が低下していく。植物による光合成活動がピークに達する夏季には、大気中の二酸化炭素濃度は最も低い値を示す(陸上での二酸化炭素の吸収、放出の後、大気が混合して、海洋上の大気も陸上と同じように変動する)。図5.2-1は、季節的な陸上生物活動に伴う二酸化炭素の放出、吸収を反映した結果を示していると考えられる。

 

5.2.2 海洋の二酸化炭素濃度の変動

一方、海洋中の二酸化炭素濃度は、ほぼ全海域にわたって夏に高く、冬から春にかけて低くなる傾向がみられた。本観測においては、1999年8月に西経128度付近を中心に、約440ppmvの最大値と、1999年5月から6月の西経160度付近を中心に、約290ppmvの最小値が観測された(図5.2-2)。水温は1999年8月に東経140〜150度付近を中心に、約29℃の最大値と、1999年5〜6月の西経180度から170度付近を中心に、約8℃の最小値が観測された(図5.2-3)。このような海洋中の二酸化炭素濃度の変動要因について、以下に述べる。

1999年8月の西経128度付近にみられる、440ppmvの高い二酸化炭素濃度は、その前航海である1999年5〜6月の西経128度付近の約360ppmvに対して季節(月経過)に対して急激に増加している。同時期の水温はそれぞれ約15℃、20℃であった(図5.2-3)。すなわち、1999年5〜8月にかけて、水温は約5℃上昇しており、二酸化炭素濃度も80ppmv増加している。この二酸化炭素濃度の増加量は、4.1項(1)でふれたように、水温の変化による熱力学的効果の増加量である、水温1℃あたり約4.2%の変化量とほぼ一致している。このことから、当該海域の夏季に観測された高い二酸化炭素濃度は、水温の上昇に起因するものであることが推察できた。

1999年5〜6月(082E航)の西経160度付近にみられる、約290ppmvの低い二酸化炭素濃度は、経時的な変化よりも経度方向の変化が大きく、低い二酸化炭素濃度に対応する大きな水温変化は見られない。082E航の二酸化炭素濃度、水温の経度分布を図5.2.2-1に示す。また082E航における海水中の二酸化炭素濃度を、全9航海の平均的な水温18℃で規格化して、水温変化に起因する二酸化炭素濃度の変化を差し引き、変動要因をわかりやすくした。

その規格化した二酸化炭素濃度は、次式を用いて算出した。

 

 

 

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