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はじめに

 

わが国の高齢者・障害者対策は昭和56年(1981年)国際障害者年の「完全参加と平等」並びに「ノーマライゼーション」の理念のもと、障害者施策にかかる長期計画の策定や各種施策の推進が図られたことにより、多くの分野で新たな取り組みが開始された。

移動円滑化対策としても、この時期から本格的な取り組みが見られるようなった。その中で運輸省が昭和58年(1983年)に策定した「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」は鉄道駅を念頭に置いたものとはいえ、初めて総合的に障害者対応の施設整備の内容について公式に指針を示したものとして大きな意味を持つものであった。その後このガイドラインは平成6年(1994年)従来の鉄道駅の他にバスターミナル、空港ターミナル、旅客船ターミナルを含め、さらに高齢社会への対応に重点を置き、妊産婦、子供連れや大きな荷物を持った人、外国人を対象に加えて文字どおり交通関係施設整備の指針となった。

本年5月、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が制定され、まさに高齢社会への対応と障害者の社会参加のための法的整備が行われた。しかしながら法的根拠はできたものの、目的達成にはかなりの時間と費用を必要としている。一方、高齢者や身体障害者等が安全かつ円滑に快適に公共交通機関を利用できるようにするためには、施設のハード面の整備はもちろんのこと、ソフト面の人的な対応が極めて重要である。

今般、高齢者の多く住む離島との重要な交通を果たしている旅客船において、高齢者や身体障害者等の通院、通勤、通学、日常生活の用に移動円滑化が効果的に推進され整備されることは、関係者として大きな喜びであり、旅客船関係者並びに一般利用者の支援と理解を大きく期待するものである。

最後に、本書が広く関係者に利用され、高齢者、身体障害者をはじめとする多くの方々の一層の移動の円滑化に向けて参考になれば幸いである。

また、本書のとりまとめについて、大変なご努力をいただいた運輸省海上技術安全局安全基準課並びに「高齢者・障害者の海上移動に関する調査研究」(委員長・家田仁東京大学教授)「旅客船のバリアフリー化に関する基準検討会」(委員長・大和裕幸東京大学教授)の各委員、関係者の皆様に深い感謝を申し上げる次第である。

 

平成12年12月

交通エコロジー・モビリティ財団

会長 大庭浩

 

 

 

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