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II-5-3. 高齢者、障害者等の接遇等についての考え方に関する問題点

1] 船の乗務員は安全に船を運航するために乗降時から出港時にかけての仕事があるので、高齢者や障害者等の接遇・介助に必ず対応できるとは限らない(状況により、あくまでも手がすいていれば対応可能)

2] 本来であれば、接遇の専任者を乗務させるべきだが中小旅客船事業者の運航する離島航路ではコスト的に難しい(施設同様何らかの補助も検討して欲しい)

3] 離島航路等のバリアフリー化について、観光航路はハード設備の整備中心で実施し、生活航路は接遇や人的介助中心で実施するといった住み分けが現実的な解決策ではないか

4] 特に生活航路では、バリアフリー設備の整備により運航人員を合理化するという発想は個人的にはあまり望ましくないと思う

 

高齢者や障害者等の接遇等についての考え方としては、中小旅客船事業者が中心の離島航路では、乗務員は船の安全運航に必要な最低限の人員しか乗務させることができないので、乗降時や出港時に高齢者や障害者等の接遇や介助ができない場合もあるといった意見が聞かれた。

4名の乗務員で運航しているある事業者では、離島の郵便業務、宅配便の集荷・取次ぎ業務といった物流関係の業務も全て自治体から委託を受けて実施しており、荷物の多い時期には出港前は荷捌きと積み降ろし業務を2.5名、出発準備業務を船長1名が担当していて、乗降の整理等に対応できるスタッフは0.5名(荷捌き担当と兼務)程度という実態であった。

本来であればもう1名接遇に専任スタッフを乗務させるべきだが、経営環境の厳しい離島航路ではバリアフリー設備の整備の補助のように何らかの補助がなければ実現は難しいといった意見があった。

一方、離島航路では観光客が多く利用する観光航路的性格の強い航路と通勤、通学、通院等の生活航路的性格の強い航路があり、両者の性格の違いによってバリアフリー化の対処方法も異なるのではないかといった意見もあった。すなわち、一元客の多い観光航路ではより一層バリアフリー設備の整備を進め、高齢者や障害者が独力で海上交通を利用できるようにするべきであるが、利用客が島民主体に限定される傾向の強い生活航路では、者に対応したきめ細かな個別の人的介助で対応するほうがより望ましいのではないかといった意見もあった。

バリアフリー設備は高齢者や障害者等を含む全ての人々が公共交通機関を利用できるようにするために必要不可欠な施設であるが、バリアフリー設備を設置した旅客船を運航している事業者の中には、従来船は4名で運航していたが、バリアフリー船の導入に伴い運航人員を3名としている事例もあり、こうしたバリアアリー化を合理化につなげるという発想について疑問を投げかける意見もあった。

 

 

 

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