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II-5. 海上交通における高齢者・障害者等の接遇の問題点等の整理

II-5-1. 接遇等の教育研修の現状と問題点

1] 接遇等に関するマニュアル整備は、一般利用客向け、高齢者、障害者向けとも整備されていない事業者が多い

2] 接遇に関する教育研修も一般利用客向け、高齢者、障害者向けとも実施されていない事業者が多い

3] 旅客船事業者は、接遇マニュアル整備や接遇に関する教育研修に関心はあるが自力では取り組めない状況にあり、簡単なものでもよいから組合や旅客船協会等で実施してほしい(旅客船事業者)

4] 高齢者や障害者の利用者むけ教育研修についても補助対象にしてほしい

5] 旅客船協会では、会員事業者向けに新入社員を対象とした一般的な接遇研修ビデオを作製しており、その中でわずかに高齢者や障害者の者向けの対応が触れられているが、本格的な教材は整備されていない。

 

離島航路を担当している中小の旅客船事業者では、接遇等に関するマニュアル整備は自社では行っていないという事業者が大半であった。一部大手の事業者においても、一般利用者向けのマニュアルの整備にとどまっていた。

また、乗客の安全に対する研修は実施しているものの接遇等に関する教育研修についてもほとんど実施されていないという状況であった。

その理由として、事業者側では接遇等の重要性は理解しているが一事業者が単独で取り組むにはあまりに経済的かつ人的負担が大きすぎるため、現実的ではないといった意見が聞かれた。教育研修についても同様の意見が聞かれた。職員を一日業務を休ませて研修に参加させる場合、現在の運航体制が維持できなくなるケースもあり、中小事業者にとっては研修会への参加といった方法はきわめて難しいといった声もあった。

教育研修については、ホームヘルパー研修のように補助対象とすれば、参加を検討したいといった意見もあった。

旅客船事業者側では、既往船舶の設備の改良等はすぐには対応できないので、接遇・介助といったソフト面での国等からの支援策に期待する意見が多く聞かれた。

たとえば運輸省(国土交通省)でマニュアルを整備して地区ごとに当該マニュアルについての勉強会を旅客船協会や組合等の業界団体の主催で開催するといった方法が最も現実的ではないかとの意見があった。実際に自社で教育研修を実施していない事業者においても、地域の海運局等の主催する勉強会には積極的に参加しているようである。

また、具体的に社内で勉強会を実施しようとしても車いすのような歩行補助具等の扱い方についてもよくわからないので、地元のホームヘルパーの方の協力がほしいといった意見もあった。さらに、高齢者や障害者等に接する際の基本的心構えといったことだけでも研修を受けさせればだいぶ接遇マナーの向上に寄与するのではないかといった意見も聞かれた。

こうした意見が多い一方で、旅客船事業者等の団体のひとつである日本旅客船協会では現在のところ高齢者や障害者等に対する接遇方法等の研修資料の作成は実施していなかった。

 

 

 

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