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II-4-3. 船舶利用時の問題点と接遇・介助ニーズ

1] フェリーの場合車両区域から客室までの階段が狭く上れないので昇降設備の設置あるいは介助をして欲しい(高齢者)

2] フェリーの場合車いすでは、車両区域から客室に移動できないため船員におぶってもらって乗降している。(車いす使用者)

3] 船内の階段が金属製で滑りやすく不安なため、介助して欲しい(高齢者)

4] 客室に設けられている優先席でないと車いすでアクセスできないので譲って欲しい(車いす使用者)

5] 船酔いしやすいので優先席を譲って欲しい(高齢者)

6] 船体動揺時に椅子席や座席から立ち上がる時に手すりがなくて転びそうなので介助して欲しい(高齢者、杖を使用する下肢不自由者)

7] 船内の通路にもっと手すりをつけて欲しい(高齢者、杖を使用する下肢不自由者)

8] 船内のトイレが車いすで使用できない(車いす使用者)

9] 船内のトイレの手すりをもっとつけて欲しい(高齢者)

 

船舶利用時の問題点は、フェリーの場合の車両区域から客室までの垂直移動に関わるものが多かった。特に階段の狭さと斜度のきつさについての指摘が多く、昇降設備の設置や船員による介助に対するニーズが強い。

船員による介助は、高齢者や障害者等が介助者なしで利用している場合に限定しているケースもあり、介助者自身も高齢者であるケースでは介助してもらいたくても介助してもらえないといった状況が生じているようである。

しかしながら、既設の船舶の施設に昇降装置を設置することは様々な要因から容易ではないので、船内においては垂直移動時の介助が最も重要になると考えられる。車いす使用者をおぶって介助しているケースもあり、状況に応じた介助が求められているようである。

客室出入口に近い場所に高齢者や障害者等のための優先席を設置している船舶もみられる。こうした優先席は、車いすでのアクセスがしやすい船内の比較的広い通路に近い場所に設けられており、船体動揺時に最もゆれの少ない場所に設置されているケースもある。

身体機能の低下した高齢者や障害者等の中には、船酔いしやすい人もあり航行中は横になってすごしたいというニーズもある。こうしたことから、優先席を利用したいのだが混雑時等に譲ってもらえないといったケースもあり、船員が優先席を高齢者や障害者等に譲るよう他の乗客に促すといったサポートも求められているようである。

さらに船体動揺時には、椅子席や座席から立ち上がる際によろめいてしまうのでつかまる場所(手すり)が欲しいというニーズも多くの高齢者から聞かれた。手すりについては、航行中の通路の移動やトイレの利用時にももっと設置して欲しいといった意見が多かった。手すりが欲しいときに、船員等がちょっと支えてくれると安心して利用できるので、こうした介助に対するニーズもあった。

船内のトイレについては、今回の調査対象航路では身体障害者対応トイレを設置している例はなかった。ある車いす使用者は、船内に利用できるトイレがないため船を利用する前日から飲食を採らず、乗船前にトイレを済ませてから乗船するといった苦労をしている人もおり、身体障害者対応トイレの整備が望まれる。

 

 

 

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