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LAS全体では、およそ3,200名の職員がおり、ロンドン都市圏内の68の出張所(operational stations)に分駐している。年間予算は1億ポンドをこえる(日本円でおよそ170億円)。サービスの2割が救急、8割がPTSに配分されている。しかし、予算の配分は8割が救急で、2割がPTSと考えて良い。

職員は救急とPTS部門で分かれている(図1)。緊急サービスはその財源の全額が政府(正確にはthe National Health Serviceという厚生省管轄の健康保険財源)から支出されるのに対し、非緊急サービス(PTS)は、民間の輸送事業者や他の公的なセクターによるサービスと競合して、病院ごとに患者輸送契約を取らなければ維持できない仕組みになっている。

2つのサービスの概略は以下の通り。

●事故および緊急サービス:毎日1,800件を超える緊急コールに対応し、パラメディックケア(paramedic care=医師に準ずる資格を有したパラメディックによる応急処置)および援助を必要とする患者を輸送している。

●非緊急サービス:毎日およそ1,000ヶ所以上におよぶ病院やリハビリテーション施設に送迎するため3,000トリップを超えるサービスを提供している。

 

(2) PTS(患者送迎)の利用資格

PTSを利用できるのは医師や専門家がその必要性を認めた場合である。サービスを利用するためには通院が必要であること、公共交通での通院が困難であることが条件となる。判断は医師が行う。サービス利用の予約は、通常はGP (家庭医、地区医)が行うが、病院、ボランティアによるケア・サービス・グループ等が行う場合もある(図2段階2)。なお、医療改革の一環として地区医は将来的にPrimary Care Trust (PCT)というグループに集約され、PCTがアンビュランスを依頼する役目を持つことになる。

利用者には歩行が可能な人もおり、基本的には公共交通を利用すると考えられるが、あくまでも医師の指示に基づくので、医師がPTSを利用するように指示すれば利用可能になる。この場合セダンタイプの乗用車を利用することが多い。

 

(3) PTSが提供される仕組み

病院では移送サービスを患者に提供するにあたり、契約事業者を公募する。満たすべきサービスの質、年間の非緊急サービスでの輸送を必要とする患者数、患者の身体状況および居住地を与え、入札を実施する(図2段階1)。LASもこの入札に参加し、落札して初めてPTSのプロバイダーになる。入札に際して、低コストということは大きな条件だが、サービスの質が低下しないことがさらに重要であり、必ずしも価格だけで決まらないこともある。重要なのは、一定の数の患者を決められた時間に病院に到着させられる体制があるかである。必要な場合は、病院の契約担当の専門委員の前で提供するサービスについて、プレゼンテーションを行う場合もある。

落札したアンビュランス組織は委託契約の内容にしたがってサービスを提供する(図2段階3)。月間の輸送実績に応じて病院から支払いを受ける(図2段階4)。

 

 

 

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