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6章 まとめ

 

6-1 本報告書のまとめと課題

本報告書は、欧米主要国の交通のバリアフリーの状況について、3ヶ年で進めてきた調査の最終年の報告書である。過去2ヶ年の報告書ですでに述べられているように、各国ではそれぞれの事情に合わせた法制度を整備して、交通のアクセシビリティにおいて地道な対応を続けている。同時に、車両や駅舎などの技術的な側面では、各国で目覚しい技術開発が現在も進んでおり、ハード面でのバリアフリーはかなり進展しており、各国でも類似したシステムが見られるようになった。

今後、特に欧州ではEU域内でのシステムの統合などの背景も含めて、ますます、車両等の技術や運行システムが共通化、標準化されていくことになると考えられる。

わが国においても様々な技術開発がなされているが、それらを上手く使うシステムと有機的に足並みをそろえたシステム開発においては、課題がないわけではない。移動制約者のニーズに即した技術開発とそれをできるだけ多くの人が使える、公共交通システムの一部として活用していくことは、ハードとソフトの仕組みが両輪となった研究開発体制が欠かせない。このことは、スウェーデンのフレックス・ルートに見られるような、研究開発・運用の体制を見ても明らかである。

報告書ではでき得るかぎり、そうした仕組みづくり、活用システムづくりの重要性についても述べたが、十分とは言えない面もある。また、十分に踏み込めていない障害者、高齢者に関連した団体や組織など、その活動と交通のアクセシビリティの関連についてもさらに知る必要がある。こうした内容的な課題に加え、これまでの3ヶ年に及ぶ調査を経た現在、当初の情報がすでに古くなりかけていることもあり、交通のアクセシブル化のスピードに目をみはると同時に、今後は、すでに調査を行った事例の追跡的な調査も重要になると考えられる。段階的に交通のバリアフリー化をすすめていく手法、アクセシビリティ対策の変遷など、整備を確実に進めるしくみの把握も参考になると考えられるからである。

さらに、これまでの一連の調査において、その対象となっていない国々の情報の把握、とりわけ近隣のアジア諸国の調査、情報交流も重要な課題である。

 

6-2 交通バリアフリー法について

2000年5月に国会で成立し、同年11月に施行された「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」は、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性・安全性の向上を促進するための法律である。

わが国では先進諸国の中で類を見ない速さで、高齢社会の到来が予測されている。また、障害者の社会参画の促進、ノーマライゼーションの理念の展開に基づき、交通の分野においても、健常者と同様のサービスが受けられるよう配慮することが求められている。

 

 

 

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