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e. 今後の計画と課題

i) 経済的な評価

イェーテボリでは自治体ぐるみで4年間でこのプロジェクトに取り組んでいる。実際に理想的なシステムを軌道に乗せるには、もう少し経済的助成がないと安定した運営は厳しい状況にある。

乗客一人あたりのコストはタクシーによるSTサービスよりも2〜3割安い。フレックス・ルートへの乗車を促しているが、タクシーによるSTサービスこだわって運動としてタクシーを利用しつづけている人もいる。しかし、現実としてSTS利用者の3人に2人が、STSの相乗りタクシーと比べてフレックス・ルートを選択する状況になっている。

1トリップにおける利用者コストと市の負担の割合について見ると、一般のバスでは1時間あたりの委託コストが300Skrかかる。フレックス・ルートはさらに75Skrかかる。つまり行政にとっては、単純に一台の通常のバスを運行する場合と比べれば、75Skrの負担増といえる。公共交通やSTSの費用など交通にかかる市にとっての総合的なコストの増加分の計測は、実際に難しく、また、クロスセクターベネフィットで考えれば、コスト増加分は、健康水準の向上や活発なシニアライフ等による医療費の低下で相殺されると考えられている。

 

表5-4-4-4 フレックス・ルートの予算内訳

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フレックス・ルートの運行を支える予算の内訳は表5-4-4-4の通りである。市のタクシーの相乗りによるSTSコストの節約分で、フレックス・ルートのコストの約半分を担っている。運賃収入がおよそ2割である。自治体の負担分については、高齢者の優れたモビリティと社会参加を可能にするための社会的経費と考えられている。

現在のヒュースボー地区におけるフレックス・ルートの運行コストは年間240万Skr (約3,600万円)である。市内の他の地区のSTSの運行コストが、平均して年間500万Skrかかっており、運行時間も8時から19時であることを考えると、このフレックス・ルートのシステムは低コストなシステムとして評価できる。

 

ii) 利用者からの評価

1999年の利用者調査では、7%の利用者がドライバーによる何らかの介助を必要としている。また、4%が降車場所の案内など、何らかの情報提供による援助が必要だとしている。

乗降場所に関する調査では、回答者のうちの74%があらかじめ設定されたミーティングポイントで乗降している。同時に回答者の19%が自宅ドアの前で乗降している。残りの回答者はドアの前までミニバスが入れないために、門の前やミーティングポイントから自宅に近づいた場所で乗降していることが明らかになった。

さらにSTS利用資格のない65歳以上の利用者の回答から、14%の人が自宅ドアの前で乗降していることが明らかになった。

 

 

 

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