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こうしたプロジェクトには、交通システムとしてのコンセプトとそれを支える技術が必要である。フレックス・ルートのシステムが出来上がった背景には、研究機関として関わった大学、企画立案を行いプロジェクトの調整役を果たしたコンサルタント、交通サービスのコンセプトに合致した車両を開発するメーカーの連携が挙げられる(図5-4-4-2)。これらの開発トライアングルに、利用者の意見と運行元である自治体の意見が組み込まれ、地域にとってより使いやすい交通システムが開発されたといえる。大切な点として、モノ(車両)の開発とそれを使うシステム(フレックス・ルートのコンセプト)の開発が一体となって効果を発揮していることが指摘できる。つまり高度な技術だけでなく、それを活かすアイディアと利用者から求められる交通サービスを実現するための制度的な後押しを明確にすることが必要ということである。こうした実証をもとに、DRTの効率的運行に対する将来的な方向性を示すと同時に、タクシーサービスの統合も視野に入れた、次世代のフレックス型交通システムの研究が現在もすすめられている。

 

c. 運行システムの概要

i) 利用資格と利用方法(予約方法)

・利用資格

利用することができるのは、地域に居住する65歳以上の高齢者である。STSユーザーの取り込みを狙っているが、STS利用資格を持つ人に限定するものではない。これまで、STSの利用資格を有しておらず、かつ公共交通機関の利用が多少困難になってきた層の取り込みも視野に入れているためである。また、65歳未満でも通常の公共交通機関の利用では介助を必要とする人ならば利用することができる。

 

・予約方法

利用する場合は、乗車および降車するミーティングポイント(停留所に類似しているが必ずバスが来るわけではないのでこう呼ばれている:以下MP)の番号を告げて予約を入れる。MPには番号が付されており利用者が認識しやすい。MPには、そこで乗降する利用者の予約が入っていない限りバスが経由することはない。したがって、予約が少なければバスの走行時間は短くなるが、多くのMPで予約が入った場合は、バスの走行時間が長くなる。

予約受付は利用日の2週間前から可能である。月曜日から金曜日までの朝7時から夕方5時まで受け付けられている。

前述の通り、予約者が多い時は、経由するMPが多くなるためにバスは遅れがちになる。つまり、最初に予約した人のあとに、その人が乗る停留所以前の停留所でのピックアップの予約が入ると、最初に予約を入れた人の待つ停留所への到着時刻が遅れることになる。例えばAさんが4番のMPで乗車の予約を入れ、5番のタウンセンターまで行きたいとする。Aさんは4番から12時に乗車したいと考えている。しかし、Aさんの予約の後に、1番や3番のMPに予約が入るとそれだけ経由地が増えることになるので、バスが12時に4番に到着することが難しくなる。

 

 

 

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