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5-4 交通事業者のアクセシビリティ対策

(1) この節の概要

この節は、スウェーデンの主な交通事業者のアクセシビリティ対策を述べたものである。

(2)ではストックホルムの交通事業体であるSLについて、主としてローフロアバスの導入実態、新たに開業したLRTのアクセシビリティ対策等を述べた。特に新しいLRTは、低床化された車両を導入して誰でも乗りやすくしていると同時に、バスターミナルや地下鉄の駅と近接して都心部から郊外部をつなぐ効率のよいアクセスを提供しており、注目されるシステムである。1979年から具体的なアクセシビリティの取り組みを行ってきたSLであるが、1998年からはバリアフリー化の責務(「公共交通の責任に関する法律」)が明確にされ、その中での同事業体の取り組み状況について整理した。

つづく(3)では、スウェーデン国内の自治体で1970年代から広く実施されはじめた、高齢者・障害者のためのドア・ツー・ドア交通である、STS (スペシャル・トランスポート・サービス)について、ストックホルムとイェーテボリ市の事例をもとにその実施状況を述べた。タクシー会社へのサービス実施業務の委託、コンピューターの導入による予約・配車システムの効率化等についてその概要を述べた。また、集合住宅等の階段で使用されている、歩行困難な利用者の階段昇降を行うための機材の活用についても述べた。さらにスウェーデンのスペシャル・トランスポートの草分けといわれるボロース市のサービスルートについてその運行概要を述べた。

また(4)において、STSの新たな方向性として、イェーテボリ市とウッデバラ市で運行されているフレックス・ルートについて述べた。STSのサービスの在り方の改革とも言うべきシステムであるため、紙面を割いてその実施状況を詳しく示した。フレックス・ルートはこれまでのSTSサービスとは別に運行されている新しい高齢者向けバスサービスで、STSのコスト削減とより多くの人が利用できる、効率の高いサービスを目標とし、STSのドア・ツー・ドア性と公共交通の効率性を合わせた特徴を持つ。イェーテボリ市の事例では、EUやスウェーデン政府の支援を受けてシステムの開発が行われ、次第にSTS利用者がフレックス・ルートに移行するなど、変化が見られている。以下の表5-4-1-1には、2つのシステムの概要を示した。

最後の(5)では、ノンステップのタクシー車両による、アクセシブルなタクシーを運行するプロジェクト、「タクシー・フォー・オール」(Taxis for All)について述べた。このプロジェクトは、タクシーとSTSを効果的に統合したシステムがイメージされており、車いすを使用した障害者、STSの利用資格を持つ人などがサービスの対象として考えられている。ストックホルム県がモデル事業として取り組み、このプロジェクトの目的に沿って開発された車両であるオムニノバ社のタクシーライダーを使って運行する構想である。このプロジェクトの概要と車両開発の状況について整理した。

 

 

 

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