日本財団 図書館


5-3 政策を推進するしくみ

(1) この節の概要

この節では、スウェーデンにおける交通のアクセシビリティを推進する仕組みとして、法制度や政府レベルの施策の他に、具体的な権限や機能をもつシステムについて述べた。まず、(2)において1994年に設置された障害者オンブズマン事務局(Handikappombudsmannen)について述べた。スウェーデンはオンブズマン制度により、行政に対するチェック機構が役割を果たしていることは知られているが、この障害者オンブズマン制度は、障害者の権利と利益に関する問題を監視するものである。障害者政策の全体目標である「完全参加と平等」の達成のために機能している概要を述べた。

(3)では、MOIECの中でも特に産業省が管轄する研究助成機構である「スウェーデン交通・通信研究局」(以下KFB)の活動と役割について述べた。KFBは研究プロジェクトに対してプランニングと資金提供等を行うことが主たる業務で、助成を行う部門の中に公共交通などのアクセシビリティを向上させるためのプロジェクトが位置づけられている。KFB自体は、自ら研究を行なう組織ではないため、大学などの研究機関や自治体から年に2回、研究助成金の申請を受けて予算配分を行う。研究開発の申請を採択するのは、機関内に設けられた専門家を含む委員会である。KFBでは単に研究・開発にとどまることなく、モノの開発とそれを運用するシステム開発を同時に推進する方針をとっている。そのため研究→開発→デモンストレーションという流れがプロジェクトの基本となっており、いずれのプロジェクトも極めて実現可能性の高い内容に結実している。こうした機構の具体的なプロジェクトの事例、予算の配分法などについて述べた。

 

(2) 障害者オンブズマン制度

1] スウェーデンのオンブズマン制度

スウェーデンのオンブズマン制度は、国民の目から見た監視制度として不正や問題点がないか国民の利益にたったチェック制度である。わが国でも同じような制度(一部ではオンブズパーソンともいう)が地域住民の権利擁護のために一部自治体で条例化されており、主として行政監視および勧告を行うために機能しはじめている。

ここで述べる障害者オンブズマン制度は、国会オンブズマン、消費者オンブズマン、マスコミオンブズマンなどと並んで、障害者の権利擁護のための制度として機能しており、移動の円滑化の推進にも役割を果たしていると考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION