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当時、通常のバス車両に車いすで乗車することは技術的にはほとんど不可能であったため、HTは障害者が利用できる特別なデザインのバスや車両を調達する事を決定したのだった。低床(low-floor)バスが導入され始めた1980年代の中頃は、コペンハーゲンにおいて、障害者が公共交通を利用するということはほとんど不可能であった。ごくわずかの地方の鉄道駅舎だけがエレベーターを備えているにすぎず、列車は車いすのためのランプすら装備していなかった。

デンマーク法では、障害者および疾病者が医者、病院、セラピスト等への行き来をするための権利があるとされている。地方自治体はこのサービスを、タクシーもしくは地域の事業者が運行する特殊デザインの車両やタクシーによって実施してきている。

 

b. ハンディキャップ・サービスの法的な位置付け

デンマーク国会は、1992年に国内の全交通事業者10社に対し、コペンハーゲンで実施されているようなサービスと同等の、障害者に対する移送サービスを実施するよう決定した。これが1992年10月より施行されたデンマーク・ハンディキャップ輸送法(the Danish Handicap Transport Act)である。HTのハンディキャップ・サービスが法律策定のモデルとして取り上げられた結果である。同法により、コペンハーゲン都市圏のみで行われていたHT方式のハンディキャップ・サービスが、全国的に広まることになった。各地方自治体は、特別な運賃を徴収せず、年間104回のトリップを提供する責務がある。さらにこの決定に続き、利用者層の拡大を図る決定がなされた。

 

c. 利用資格

i) 利用の条件

利用の条件は以下の通りである(表4-4-2-5)。

 

表4-4-2-5 ハンディキャップ・サービスの利用資格

・18歳以上であること(18歳以下には別の制度がある)

・大コペンハーゲン都市圏居住者であること

・既存の公共交通が利用できない状況であること

・車いすを使用もしくは何らかの障害者補助具を地方自治体から提供されていること

 

通院に使用する事はできない。あくまでも日常の自由な外出のためのサービスである。また、視覚障害者、精神障害者は使用する事ができない。なお、通院には別の専用のサービスが用意されている。また、通勤についても別のサービスがある。従って計3つのシステムが存在する事になる。交通大臣がこの3つのシステムを1つに統合しようと働きかけているが、まだ現実に至っていない。

 

 

 

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