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2] 国家レベルの施策

デンマークでは、現在のところ交通のアクセシビリティについての総合的な法体系は整備されていない。しかし、移動制約者のために、公共交通を含む全ての公共施設をアクセシブル化するための取り組みが政治的にも重要な課題として位置づけられている。省庁間の連携により、1999年末に政治的に高い位置付けをもった委員会を設置し、アクセシビリティの課題に取り組みを開始している。当然ながら運輸大臣もそのメンバーとして委員会に参加している。

デンマークの障害者政策の基本原理は、社会における平等を確実に実現するための、障害者の社会への統合(integration)である。法律の理念として、一般的な方法(または法により)を通じて障害者の要求を守ろうというものである。障害者と他の市民は平等であるという原則が政策の基礎である。したがって、障害者のための特別な法制度は存在しない。基本的には、特に障害者のニーズが満たされない場合に限り、その法律の中に付加的に障害者への配慮を求める条項を付け加えるのみである。たとえば、障害者に関する法制は、聴覚障害者(1950)、視覚障害者(1956)、知的障害者(1959)など、特別なグループについて特に配慮が必要な部分に関する規則を、一般の社会的扶助、教育、医療等の法制に付加するものである。

支援が必要な障害者に対する福祉給付は、社会扶助に関する法(Social Assistance Act. 1974)による。すなわち指導、金銭的あるいは現物支援、職業能力の開発や再獲得、ケア、特別な援助や教育的な支援を必要としている人に対して、それらを給付する。この観点から言えば、障害者を特別に扱う必要はないのである。

必要な場合には補償的対策により、障害者を他の人と対等の条件で学校、職場、コミュニティでの生活の中に統合することを目指すのである。しかし、障害者を他のグループと何ら変わることなく扱うことに課題がないわけではない。そのため4-3に示すような、障害者協議会等の諮問等を行う組織の役割が重視されている。

 

 

 

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