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2] ミニバス

a. マンチェスター・ミニバス・エージェンシーの概要

ここでは英国内に多数存在するミニバスの事業者について、マンチェスター近郊で様々な独創的なサービスを提供しているマンチェスター・ミニバス・エージェンシー(以下MMA)社を事例としてその概要を述べる。同社はレジスタード・チャリティ(registered charity:チャリティー団体としての登録)および有限会社としての登録を行っている法人である。

英国ではコミュニティ・トランスポートの他にも、こうしたミニバスなどを運行する事業者が「すきま産業」的に独自のサービスを展開している事例が見られる。例えば、比較的大規模な地域の公共交通サービスの提供を受託している事業者から孫請的に一部路線のサービスを受託したり、ナショナルトラストへのリフト付きバスの貸し出しを行ったり、路線バスが治安悪化や収益悪化のため、撤退してしまった地域に新規のサービスを提供するなど、サービス形態は多岐にわたる。

バスの規制緩和の結果、マンチェスターにおいても様々な規模のバス会社が一気に参入した。マンチェスター都市圏(人口約250万人)で、現在は50社程度のバス会社があると考えられるが、1985年の規制緩和前は10社程度だった。規制緩和により規模も様々な事業者が一気に参入した結果である。

MMAの現在の保有車両数は47台であるが実際に自社所有しているのは23台である(図3-4-3-0)。自社所有車の多くは、新規購入では高いので、基本的には中古を購入して必要な改造を行って使用されている。残りの24台はレンタカー会社からの長期リース契約などにより低コストで調達している。レンタカーのメリットは、スクールバスの請負があるため、長期休暇などの季節変動に対応できる事、単年度請負契約によるリスク(次年度の契約が取れない場合)が回避できるためである。長期契約や数台まとめた一括レンタルの契約等を取り付けて、メンテナンス費用をレンタカー業者に負担させるなど、コストの削減と効率的な車両管理に努力が注がれている。

 

b. 運営と財源

運営の方針は、ボランティアによる運営委員会で意思決定を行う。

財源は宝くじ基金等の単年度助成および市の補助として毎年12〜13%の財源を賄っている。

収入は概ね、運賃、契約料、補助が1/3ずつである。

職員数は28名で、うち6人が事務職である。ドライバーの多くは歩合制による契約社員である。職員給与については利潤が出れば、理事会で認められた場合には給与を上げることも可能である。公務員の1年前の給与ベースをもとに設定している。しかし、実際は市の職員より給与水準は低い。市の中堅職員の平均年収は2.5万から3万ポンドと考えられるが、MMAの場合、社長でも2万ポンド、賃金が高い職員でも1.6万ポンド程度である。もっとも低い人は9,500ポンドである。

 

 

 

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