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アメリカのパラトランジットを模して、1970年代初頭にイギリスに登場し、隆盛を迎えたが、コスト面から固定ルート化されたり廃止が相次いだ。1980年前後に高齢者・障害者および車いす対応という点で復活した。病院等への送迎も行うが、一部で他の移送サービスと複合して実施されている。ボランティアによる運行が一般的であり、多くが自治体からの財源補助を受けている。

今後は需要増への対応、高齢化への対応が重要と考えられており、人口の15%程度がこうした送迎サービスによるモビリティの確保が必要になると考えられる(CTAによる予想)。利用方法や距離の制約等で不満を持っている利用者も多く、サービス改善の余地がある。

また、大きな課題として、有給スタッフを抱えている場合は、ドライバーの資金の問題が深刻である。マンチェスターの事例では、1回の送迎で平均1.2〜1.4マイル走行するが、運賃が£3.5である。経費は年間700万ポンドかかっており、運賃収入だけで経費をカバーするのが難しい。ロンドンでは年間2,000万ポンド程度かかっていると思われるが、1回あたりの運賃は£8を徴収している。

公共交通手段はアクセシブルになってきているが、依然としてそれらを乗り継いで外出するには体力的に困難な人が多い。したがって、ダイアル・ア・ライドの役割は今後もあると考えられる。

 

b. CTA (Community Transport Association)の設立

i) CTAの設立経緯

これまで述べてきたコミュニティ・トランスポートのシステムは、1970年代から始まったとされている。背景として、新興住宅地などで特に夜間や週末に、公共交通が不便になる地域、移動制約者が利用できるアクセシブルな公共交通がないため、それを補うシステムの必要性が高まったこと、地域行事等でグループが使用する車両が必要になったことが挙げられる。

1975年には最初のダイアル・ア・ライドのサービスが開始された。続いて1977年および1978年にはミニバス法が通りPSV (Public Service Vehicle)の免許なしに、自治体やボランタリーセクターが非営利でミニバスの運行を行うことが可能になった。ただし、営利目的と一般大衆を利用対象とすることは認められていない。このことにより、特に公共交通が十分に発達していない地方では、グループ貸し、ダイアル・ア・ライドの普及が見られた。1980年にはロンドンでもダイアル・ア・ライドが開始された。

様々なCT組織が増える中で、それぞれの組織の専門化がすすみ、組織間の横の連携を強めて様々なサポートをする組織の必要性が高まった。

こうした背景からCTA (Community Transport Association)は、1981年に設立された。当初は広報出版活動から始まったが、交通政策の面での圧力団体としても機能している。北アイルランドも含む全国組織で、現在の会員数は1,300団体ほどになっている。内訳は、およそ半数がCTを運営する非営利のボランティア組織、20〜25%がCT+介護サービス等を提供する組織、残りが自治体等である。

 

 

 

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