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3-4 交通事業者のアクセシビリティ対策

(1) この節の概要

この節ではイギリスの交通事業者のアクセシビリティ対策について述べた。

具体的な事例としてロンドンの都市圏交通事業体(TfL)のアクセシビリティ対策を(2)で述べた。TfLには移動制約者の対策を進める部門Access & Mobility (アクセス・アンド・モビリティ)が設置され、ハード設備の設計指針の作成から利用者向けの情報提供まで、アクセシビリティに関するあらゆる業務を行っている。

こうした取り組みの成果により、TfLではローフロアバスの導入に積極的に取り組んでおり、1990年代からの取り組みで、5,600台のうちのおよそ半数の車両がローフロア化されている。2章で述べたように1995年時点でのローフロアバスの普及台数はわずか、100台であったことから、飛躍的に普及を遂げていることになる。ロンドン名物の2階建てバスも新型車ではローフロア化されている。

地下鉄も新線を中心にバリアフリー化が進められている。地下鉄は歴史が古く、ホームと車両の間のギャップや駅舎での垂直移動が大きな課題になっているが、そうした既存施設への今後の対策について、その概要を示した。アクセシビリティ化された、地下鉄では、特に新たに建設されたジュビリーラインはバリアフリー化が進んでおり、その事例について述べた。

また、新たに郊外部に建設されたクロイドン地区のLRTについて述べた。同LRTは設計段階から完全にアクセシブルにされたものであり、車両および駅舎の状況などについて事例を示している。さらに、80年代の開業当初から、車両、駅舎ともにアクセシブル化されたドックランド・ライトレールのアクセシビリティ対策についても述べた。また、最新のロンドンタクシーについての、アクセシビリティに関する仕様についても記述した。

(3)においては、英国内で通常の公共交通機関を補完する、またはそれに代る手段として役割を果たしている地域レベルの交通スキームについて述べた。イギリスではコミュニティ・トランスポートをはじめこうした地域レベルでの独自の交通サービスが非常に発達している。国内に多数存在するコミュニティ・トランスポートのための組織であるCTAについてその活動概要を述べた。また、すきま的に地域のニーズに応じた様々なサービスを提供するミニバスの事業者の事業概要について記述した。さらに、高齢者・障害者のために、イギリスの主要なタウンセンターやショッピングモールなどで普及している電動車いす等の貸し出しシステムである、ショップモビリティについて、事例をもとに概要を紹介した。

 

 

 

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