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2章 交通のバリアフリー化に関する欧州の政策動向の概要

 

2-1 交通に関する全般的な政策動向と障害者の参加

調査対象である国々の個別の政策を把握する事と同時に、欧州全体としての政策展開の方向性を知る事は重要である。各国のEUとの関わり方は様々であり、一様にEUの政策に追従しているわけではない。しかし、高齢者・障害者の交通のアクセシビリティ対策や交通をとりまく環境問題については、大きな方向として共通性を持っている。

本章は、欧州全般およびイギリス、デンマーク、スウェーデン各国の政策概要を提供する位置付けである。各国の政策動向を関連付けて把握する目的で、とりわけ欧州運輸大臣会議(ECMT: European Conference of Ministers of Transport)の政策動向の概略を冒頭で述べた。

 

(1) イギリス・デンマーク・スウェーデンの障害者が参加した諮問機関の状況

欧州運輸大臣会議では、「障害者が参加(involving)することはアクセシブルな交通を計画および運行する上での基本である。障害者の諮問を受ける事は、国家レベルのアクセシビリティにおいて様々な改善を実現するための効果的な方法である」、という姿勢を表明している。

表2-1-1-1(a)〜(c)では、EUおよび調査を行った3ヶ国において、交通のアクセシビリティに関して諮問等を行う組織をまとめたものである。交通のバリアフリー化を推進するにあたり、当事者参加による意見聴取、ニーズの把握が重要である。こうした取り組みが交通計画を行う上での日常的なシステムとして機能している国が多い。政府および地方自治体レベルで定期的、日常的に意見交換ができる関係が築かれていることにより、障害者等のニーズをより高いレベルで施策に反映できるものと考えられる。こうした諮問機関は、その役割が相談・協議および具体的な意見の提案に限定されている場合が一般的である。しかし、その影響力は大きく、通常それらの機関からの提案は政策に具体的に活かされる事が多い。イギリスの障害者交通諮問委員会(DPTAC)およびフランスの障害者運輸連絡委員会(COLITRAH)などは、その役割と力を十分に発揮している事例と言える。

 

 

 

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