日本財団 図書館


交通政策では「ハンディキャップ・サービス」(デンマークのスペシャル・トランスポート・サービス)といわれる個別交通のサービスが自治体と交通事業者により実施されている。また、都市内のバスの低床化が1990年代から強力に取り組まれた結果、コペンハーゲンで運行されるバスの約9割がローフロアになっている。

スウェーデンは、慈善団体によるスペシャル・トランスポート・サービス(STS)が1950年代から開始された。このサービスは後に自治体の取り組みとして定着し、1980年には国内のすべての自治体でサービスが提供されるようになった。STSの先駆的な取り組みを行ってきた背景を明らかにすることと同時に、STSのコスト的な課題を解決する新たな方向として、利便性はそのままに運行効率と高コストを改善するための「フレックスルート」のサービスが開始されている。また、都市部でのバスやLRTのローフロア化などの取り組みが進められている。

イギリスではダイアル・ア・ライドやステーションリンクといったアクセシブルなバスサービスの取り組みが行われてきた。また2階建てバスをも含めた車両のローフロア化が促進されている。さらに2000年より、ロンドンタクシーに車いす対応のスロープ装着が義務化されるなど、公共交通におけるバリアフリー化の取り組みが進んでいる。開業当初よりバリアフリーであったドックランドのライトレールに加え、新規で開業した地下鉄およびLRTでは、積極的なアクセシブル化が図られており、大都市での取り組みとして注目される。

以上述べたようにこれらの国々のアクセシブル化の取り組みや、それを支える法律、制度などの仕組みを知ることは重要である。本報告書は、これら3ヶ国の調査をもって、当該プロジェクトの最終年のまとめとして総合的な観点から欧米先進国の、高齢者・障害者も利用できる交通の実態について報告したものである。

 

1-2 本年度調査の位置付け

この調査は3ヶ年にわたって実施してきた「欧米主要国における高齢者・障害者の移動の円滑化に関する総合調査」の最終年の調査である(図1-2-1)。初年度は、前述の通りヨーロッパの先進事例として、フランス、ドイツの主要都市を調査した。昨年度は、北米を対象にしてアメリカ、カナダの交通政策、アクセシブルな交通システムの実態について調査を行った。

 

図1-2-1 3ヶ年の調査の流れ

007-1.gif

 

今年度は、イギリスおよび北欧のデンマーク、スウェーデンを調査の対象とした。

これら3カ国はこれまでにも優れた交通システムの紹介が数多く行われている。また、福祉先進国として知られ、それだけに高齢者・障害者のモビリティに関する既往調査も少なくない。今回の調査では、これまで調べられてきた事例以後のさらに新しい取り組み、例えばLRTやフレキシブルなSTSなど新たなシステムの記述により多くの紙面を割く構成とした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION