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1章 調査の目的

 

1-1 調査の目的

わが国の高齢化率は17.2% (2000年)で人口のおよそ6人に1人が65歳以上の高齢者である(厚生省平成9年推計値)。さらに2015年には、4人に1人が高齢者になると予測されており(同)、高齢化の急速な進展により、わが国では世界的にも経験した事のない時代にさしかかっている。また、身体障害児・者、知的障害児・者および精神障害者は、全国で約570万人である(『障害者白書』平成12年版)。

こうしたなか、高齢者・障害者をはじめとする、いわゆる移動制約者とされる人々が、自立した生活を送り、社会参加を可能にすることが重要である。そのためには安全、かつ身体的負担の少ない移動手段が確保された社会基盤を整備することが緊急の課題である。

国会では2000年5月10日に交通バリアフリー法(正式名称:「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」、同年11月15日施行)が成立した。同法により、「鉄道駅等の旅客施設及び車両等について、公共交通事業者によるバリアフリー化を推進する」、「鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が策定する基本構想に基づき、旅客施設、周辺の道路、駅前広場等のバリアフリー化を重点的・一体的に推進すること」が定められており、今後は駅舎だけでなく、周辺の市街地も含めたバリアフリー化が今よりも飛躍的に進展すると考えられる(6-2参照)。

いっぽうで、東京・大阪などの大都市では、地上・地下に様々な交通システムが重なり複雑化すると同時に、地方都市では自家用車の普及が一層進み、バス・鉄道等の公共交通の縮小化が進んでいる。このため、自ら移動手段を持たない高齢者・障害者等の円滑な移動を実現するという点では、今後の取り組みが非常に重要である。

このような背景を受けて交通エコロジー・モビリティー財団では、1998年より欧米主要都市において高齢者・障害者の移動の円滑化のために交通の分野でどのような対策が取られているのか現状を把握するための調査を実施してきた。同時にわが国の交通に関する先進的な事例を取り上げ、日本における移動支援策のあり方を展望するための調査を行ってきた。

昨年度(1999年度)は北米の先進事例として、アメリカ、カナダの主要都市において高齢者・障害者等の交通に関してどのような対策が取られているのか現状の調査を行った。一昨年(1998年度)は、ヨーロッパの先進事例として、フランス、ドイツの調査を行い、わが国における移動支援策の在り方を展望する調査結果と合わせて報告した。

本調査は、ひきつづき欧米主要都市における移動制約者への対策を把握する3年目(最終年)の調査である。調査対象をふたたびヨーロッパに置き、イギリスおよび北欧(デンマーク、スウェーデン)の交通政策について調査を行った。これらの国ではそれぞれ、交通において以下のような特徴を持ち、わが国においても今後、参考にできる事例が含まれていると考えられる。

デンマークはスウェーデンと並び、在宅介護などの取り組みでは福祉先進国として知られている。

 

 

 

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