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(1) コスパス・サーサット・システムの概要

1970年代の後半に、アメリカの航空宇宙局(NASA)は、当時15万機余りもあった民間の小型機(一般航空)の遭難位置の捜索のために衛星を使用する研究を開始した。この研究は、衛星の移動によるドップラー効果による受信周波数の変化から、遭難の位置を決定しようという計画であった。このアメリカの計画は、カナダとフランスとの国際協力で実施されることになり、このシステムはサーサット(SARSAT:Search And Rescue Satellite Aided Tracking)と呼ばれた。一方、ソ連もこのシステムに興味を示し、独自の衛星を打ち上げてこのプロジェクトに参加することになりソ連のコスモス衛星を使用するためにコスパス(COSPAS:COSMOS Satellite for Program of Air Sea Rescue)と呼ばれ、併せて、コスパス・サーサット・システムという国際協同システムとして試験運用される協定が成立して今日に至っている。

このシステムは今日までに陸海空で数百名の人命を救っている。現在のところCOSPAS側とSARSAT側のそれぞれ各2衛星が運用されている。

このシステムの欠点は

1] 周波数安定度のあまり良くない送信機の電波(121.5/243MHz)を使用し位置測定の計算をするので測位誤差が大きくなるとともに、衛星軌道の両側に測位点が出ることもありうる。

2] 衛星はその受信信号を中継するだけのため、その有効範囲は、送信をする送信機と衛星からの中継を受信する地上局(局地利用者局:LUT、Local User Termina1)とが低い軌道の衛星を同時に見える範囲に限定される。

3] 121.5/243MHzの標識の送信信号は、耳で聞くと“ピュー・ピュー”という信号音で変調されているのみで、送信局名の符号もついていないので、遭難者が特定できない。

406〜406.1MHzの周波数帯を使用したシステムが、コスパス・サーサット・システムで開発され、それがGMDSSで採用されて極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置となった。

コスパス・サーサットの衛星は、衛星上で地上の送信機から電波の受信周波数を測定して、それを受信データとともに衛星上に記憶しておき、それらを繰返して送信することにより、全世界のLUTが全世界の遭難のデータを取得できる。また、その船名符号なども得られる。

 

 

 

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