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すでに多くの船舶で用いられてインマルサット海事衛星通信の船舶地球局(SES)の内の電話、中低速データ通信、ファクシミリ等の業務を行うインマルサットAのほかに、無指向性の空中線が使用でき、低速データ通信ができるインマルサットCが導入され、前項のナブテックス受信機と同じような機能を持つ高機能グループ呼出(EGC)受信機も併置される。

コスパス・サーサット・システムは、遭難用に国際協力によって運用されている衛星システムであり、406.025MHzを送信する極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)が使用される。

GMDSSのもう一つの大きな特長は、遭難・安全通信を全世界的にしたことである。そのため、VHFを主体とした短距離のA1水域、MFを主体としたA2水域、インマルサット衛星通信を主体としたA3水域と、インマルサット静止衛星による通信が不可能で、短波(HF)通信に頼る高緯度のA4水域に分けて、それぞれの航行する水域別に装備する無線装置を規定してある。

GMDSSでは、それぞれの水域に対していずれも次のような機能が考えられていて、遭難・安全通信についてそれぞれの無線装置が対応している。

(1) 遭難警報(Alerting)

VHF、MF、HFのDSCと衛星通信が使用される。この送信の余裕のない遭難船のときは、極軌道衛星利用、静止衛星利用又はVHF利用の非常用位置指示無線標識(EPIRB)が自動浮上して送信を開始する。他の手段がないときはEPIRBは船上で送信させることもできる。これらの送信には、自動的に船舶の識別が付されている。送信の余裕のあるときには、DSCは遭難位置を付して(自動的に航法装置からのデータの導入もできるが、それは要求されていない。)警報できるが、常時それを行うことは期待できない。遭難信号を送信した極軌道衛星利用EPIRBの位置は、コスパス・サーサット衛星によりその位置を約5kmの精度で決定でき、これは全地球的に可能である。しかし、静止衛星利用のEPIRBの場合は位置の決定はできないので、この場合は、何らかの方法で遭難位置を自動的に付加することが要求されている。

(2) 捜索救助協力通信

遭難の発生とその位置を知ったとき、救難機関は行動を開始するとともに、付近の船舶に通報する。この通信は各種の無線電話、DSCが使用されるほか、後述の海上安全情報の放送も使用される。

 

 

 

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