日本財団 図書館


そのため、従来型のレーダーのPPI表示方式では、残光性の蛍光面があるCRTを用いて、その残光によって映像を見るようにしている。しかし、このブラウン管では、電子ビームによって直接発光させるときの映像の明るさは、残光に比べるとはるかに明るいので、輝度が低い残像を一緒に見ることができない。直接発光させるときの発光色は、残光色とは異なるので発光色を色フィルターによって押さえて残光だけが見えるようにしている。

この残像によるレーダーの映像はかなり暗いので、昼間はフードを掛けなければ見ることができない。一時期には高輝度の残光性を持つブラウン管も開発されてレーダー応用されたこともあったが、取扱いの問題と価格の点から普及するまでには至らなかった。

映像をメモリに保存しておき表示を早い周期で更新することは、特殊なブラウン管を使用することなく明るく表示できる利点がある。

ここまでの解説では基本を理解する目的から、従来方式のレーダーの方式を述べきたが、一般に市販されているテレビやパソコンのモニタはレーダーでも有効に利用できる。昼間でもフードをかけなくてよい明るいレーダー表示、カラー表示及び各種のメモリ機能の応用等の新機能の開発が進み、次項に述べるテレビのブラウン管を利用した表示器の方式に変遷した。

 

4・10 ラスタスキャン型レーダーでの表示方式

コンピュータのモニタや家庭用のテレビと同様のブラウン管を表示器に使用するレーダーでは、反射信号をデジタル化して、その一つ一つを超LSI (LSIは大規模集積回路のこと)による記憶回路(メモリ)に記憶されている。10Mbps以上の速度で変換された信号は、高速で作動できる1次元配列上の1次メモリに記憶され、さらに画面全体を記憶する2次元配列の大容量2次メモリの該当アドレスのところに転送される。記憶させるメモリの位置(2次元配列のアドレス)はアンテナの方位角度と受信されるまでの遅れ時間から瞬時に求められ、反射信号のデータはその位置に記憶される。次にそのデータを高速で順次読み出して、テレビに使用されているものと同じCRTに表示させる処理を行なっている。このような処理を走査変換という。ラスタスキャン型レーダーの表示はテレビの映像と同じように、横方向の掃引線を上下に動かす形で毎秒60回程度も書き直しているので全面が同じ明るさで、昼間でもフードなしで見ることができる。このようなラスタスキャン型レーダーの映像は白黒テレビ用のCRTでも表示できるが、カラーテレビのCRTを使用すればカラー表示にもでき、物標からの反射エコーの強度によって表示色を変えたり、画面上のデータの表示色を変えることもできる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION