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この式から地上からの高さ約36000kmの円軌道に上げた衛星は24時間の周期を持つことが分かる。このような衛星が、地球の赤道上を東向き(地球の回転と同一方向)に回ると、地球の自転と衛星の軌道上の動きは完全に同期をするので、地上の各点から衛星は赤道上に止まったように見える。これが静止衛星である。

静止衛星を打上げるのには、まず、衛星をその軌道の地球から最も遠い点(遠地点)が、静止衛星の高度の近くになるような長楕円軌道(これを遷移軌道という。)に上げ、遠地点で、衛星に付属している遠地点モータと呼ばれる推進器を吹かせて、赤道を回る円軌道(ドリフト軌道)に入れる。ついで、衛星付属の推進器と姿勢制御の細かい調整によって、時間をかけて、衛星を所定の位置に静止させ、その後の運用中も、一定期間ごとにその静止位置を保持するように再調整をする。静止衛星の場合は、その寿命はこの位置の再調整用の推進器の燃料によって制限される場合が多い。

こうして地球上の高さHの衛星から見える地球上の地域は、衛星の直下点を中心とする直径Dで囲まれる円域となる。Dは

D=2Rcos-1 (R/(H+R))ただし、Rは地球の半径6370km

で計算されるが、一般的には、衛星のカバレージは、送受信点から衛星を見る仰角が5°(又は10°)に限定されるので、Dの範囲は上式より少し小さくなる。

こうして、緯度70°以上の極地方を除く地球上の全地域は、大略3つの静止衛星でカバーできる。(図7・14参照)

しかし、静止衛星を船舶の通信に使用する場合は、通信をする地上の地球局と船舶が、その通信を中継する衛星を同時にみる必要があり、さらに完全にカバーするためインマルサットの海事衛星の場合は図7・15に示すように、4つの静止衛星で極地を除き全世界の海域をカバーするようにしている。

 

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図7・14 静止衛星と極軌道衛星

 

 

 

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