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船舶の運航あるいは遭難時にも、これらの宇宙技術が数多く使用されるようになってきている。アメリカのマリサットシステム、それを継承した国際システムであるインマルサットの海事衛星通信設備は、1977年ごろから極地方を除く世界の全海域で、陸上と同じような明瞭な電話、ファクシミリ、データ通信等が可能となっている。また、NNSS、GPSなどの衛星航法システムは、全世界の海域の船舶の位置の決定にはデッカ、ロラン、オメガなどの地上系の電波航法システムよりも優れた性能を発揮している。GPSはアメリカ国防省の安全保障上の理由による故意の精度の劣化をうけた場合においても、全世界的に約100mの精度での位置の決定が可能であり、特に高精度を要する海域では、ディファレンシャルモードで使用すれば約10mの精度での測位も可能である。さらに、特殊な用法ではセンチメートルオーダでの位置の決定法も研究されている。気象衛星、海洋観測衛星等のシステムの船舶、漁船への応用も数多く試みられている。

船舶の遭難・安全への宇宙技術の利用は、「全世界的な海上遭難安全システム」、いわゆるGMDSSの一つの特長である。インマルサット海事通信システムのうち、特に、無指向性空中線の使用ができ、印刷電信システムのみのインマルサットC、そのインマルサットCとその装置の兼用もでき、遭難安全情報の放送の自動受信のできる高機能グループ呼出しと衛星利用の非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)がある。このEPIRBにはインマルサット衛星利用のもののほか、コスパス・サーサットの衛星利用のものがある。

 

7・3・2 人工衛星とその軌道

石でもボールでもよい。それを上に向かって投げると、ある程度の高さまで上がって、落ちてくる。これは地球に引力(重力)があるからで、このときの石の飛んでいる道筋が放物線である。飛行機やヘリコプタは地上に落ちてこない。ヘリコプタの例でいえば、これは上向きにプロペラを回して地球の重力に逆らって上向きの推進力を作り、それが重力と釣合う、つまり平衡すれば空中に静止することができるからで、エンジンが止まれば、墜落をするほかはない。

石に紐をつけてぐるぐると回してみよう。石は回している手を中心にぐるぐると円を描いて回転する。

 

 

 

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