日本財団 図書館


5. 効率化検討の成果

 

5.1 外板取り替え作業

海難工事等の際に必要となる外板取り替えには対象船舶の線図(オフセット)が入手しにくいという問題点がある。今後の熟練工不足等も考慮し、光学式外板測定装置の導入を検討したが、工数的には直接計測と比較して改善効果が少ないこと、船首・船尾部分の破損には適用が難しいことなどからそれ以上の導入検討は見合わせることとした。

むしろ工業会等が本船建造ヤードとの間で仲介を行うことにより当該部分のオフセットを容易に入手できる受け皿を作る方が実効的であるとの付帯意見があった。

 

5.2 船体清掃作業

5.2.1 ブラスト方式の改善検討

船体外板の清掃は、錆、蠣殻の他、劣化した塗料の剥離を行う工程であり、従来はサンドブラスト装置により行われてきた。しかしながら近年はサンド微粒子の飛散による周辺環境への影響が問題となる場合も出てきている。

委員会ではこれに代わる船体清掃方式として、(株)フロージャパンの協力をいただき、同社の「超高圧ウォータージェット式洗浄剥離装置」について導入を検討した。これは、毎分27リットル程度の水を200MPa以上の超高圧で吹き付けることによりサンドブラストと同等の効果を得るものである。

本方式の利点は、サンドブラストに用いる銅ガラミ等に比べて安価な工業用水を使用すること、剥離物及びサンドの飛散がなくサンド回収の手間がかからないこと、廃水を濾過して得られた残滓のみを産業廃棄物として処理すればよいこと、塵肺対策等の職場環境の面で改善が図れること等が挙げられる。

一方、サンドブラストに比べ作業効率が低下すること、水を使うため戻り錆が発生すること、寒冷地では廃水凍結の問題があること、メンテナンス費用が割高になること等の欠点がある。ただし、このうち戻り錆の問題は後述する塗装方式の改善により克服できるものと考えられる。

因みに米海軍等では既に本方式による船体清掃が仕様として指定されており、米海軍艦艇の修理のために必要な設備を保有している国内ドックがある。作業環境改善の見地からも今後本方式がより一般化するものと思われる。

また本方式には、真空吸着により自走し廃水も同時回収できるロボットタイプもあり、セッティングには時間がかかるが均一な表面仕上げが得られるため、尚一層の自動化が図れるものと期待しており、来年度に詳細を検討したい。また、洗浄に使用した廃水を回収できれば、洗浄水回収再生装置(処理能力毎分60リットル程度)により繰り返して利用できるため、さらに環境面、経済面の効果が期待できる。

なお、別添資料として超高圧ウォータージェット式洗浄剥離装置の導入コスト試算を添付したので参照されたい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION