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海運業界の主要な制約条件の一つは、船舶金融の不足であります。利回りが低くリスクが高いため、内外の資本の導入が難しく、また銀行部門の専門能力の不足も国内銀行からの融資がきわめて乏しいことの一因となっております。たとえ融資が得られる場合であっても、高金利が障害となります。

この隘路を打開するために、マレイシア政府は1992年に海運基金を創設し、海運産業振興のために長期資金援助に道を開きました。この基金は、マレイシアにおける民間海運の輸送能力を拡大するために、制度金融の資金を活用した海運ベンチャーの振興、船腹取得のための長期資金を供給する船舶金融をその内容とするものであります。1997年にはこの海運基金による融資対象範囲を拡大し、マレイシア国内の新造船・修繕船の振興のため、造船所にも資金を供給することが可能になりました。私の承知しているところでは、海運基金は全面的に活用されておりまして、業界の各企業から、これを回転基金に転換するよう要請されております。政府は条件の改善を図って、海運基金に10億リンギを追加投入し、2001年度予算にこれを盛り込みました。

造船業経営者の皆様には、アジア太平洋地域における専門能力と業務の開発、振興に力を入れて頂きたいと思います。この会議は、アジア太平洋において進行中の、造船および海事関連産業における技術と専門能力両面における最新の展開について、できる限り多くの情報を得る絶好の機会であります。

多年にわたり、APSEMはアジア太平洋地域の造船分野における、専門家と官界の間の地域協力を促進することを主目的として開催されてまいりました。APSEMがその間口を広げて、各国の発展に直接係わっておられる専門職業人、実業家、企業管理者、政府職員各位の参加を得たことは、まことに勇気づけられることであります。これは各業界に影響を及ぼす新たな発展、問題等について、意見と情報の開かれた交換を通じて、各業界の一層の発展に寄与するものでありまして、APSEMの将来がますます期待される所以であります。APSEM2000が、各国が採用する技術情報を入手する打ってつけの機会になるものと、私は確信しております。

今後2日間にわたって会議が開かれるわけでありますが、造船業と支援産業の現状について、また最新の造船技術について、各国代表の皆様は詳細な情報を交換されることと思います。

この会議が各国代表の皆様の間における活発な討議の場となり、また相互の経験について学ぶことにより、私共それぞれが多くを得るものと信じております。

また会議後に、ペナンのHong Leong Lurssen造船所、Lumut PSC海軍工廠、さらにポート・クランの北港を皆様全員が視察されるように、AMIMが研修ツアーを企画されたことも、大変興味深いことと感じております。この研修ツアーの間に、マレイシアの美しい風景もご覧になり、楽しんで頂けるものと確信いたします。

このご挨拶と共に、第24回アジア太平洋造船専門家会議(APSEM2000)の開会を正式に宣言させて頂きます。

ご静聴ありがとうございました。

 

 

 

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