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(4) 材質の変化

溶接によって局部的に大量の熱が与えられ、しかも比較的急冷されるので、溶接部近傍の母材の材質が変化する。このような熱影響によって、割れを発生する場合もあるので、溶接施工には十分な注意が必要である。

(5) 検査

溶接部内にはブローホール、スラグ巻き込み、割れなどの欠陥を生ずる可能性が多いが、肉眼ではわからないため、放射線検査、超音波探傷検査、磁気探傷検査その他のいわゆる非破壊検査を行うこともある。

また、溶接部全線にわたっては、肉眼検査以外には方法がないので、ある程度、作業者を信頼すると共に、溶接前の準備点検と溶接条件の確保と施行法を完全に行う必要がある。

 

1.2 溶接用鋼材

鋲接船の時代には、造船用鋼材に対してそれほど神経質になる必要がなかった。鋲接は単なる機械的接合であるから、極端なことをいえばどんな材料でも方法さえよければ健全な接合を行うことができたわけである。

しかし、溶接船となると事情は全く異なってくる。指導書にも書いてあるとおり、第2次世界大戦時、アメリカで建造されたリバティー船が重大事故を続発したが、これは、溶接用鋼材について十分な知識がなかったためであり、現在の造船技術に対して貴重な体験を与えたといえる。以後あらゆる方面から研究が行われ現在では溶接用鋼材として、日本工業規格(JIS)、日本海事協会(NK)、AB(米国)、LR(イギリス)、CR、BV等の協会ごとにその規格が設けられている。

従ってJIS又は船級協会の規格に合った鋼材を使用すれば、材質については問題ないわけであるが、その根拠について説明を加える。

溶接用鋼材は、次の2点から検討されなければならない。

1] 工作上の溶接性

溶接によって、継手の近傍には局部的に大量の熱が与えられ、しかも、それが比較的急冷される。このような熱影響によって母材は変質し、場合によっては、変質部や溶着金属部に割れを生ずることがある。割れはどんなに小さなものでも、鋭い切欠となり、先端に応力が集中して大きな破壊のおそれとなるので、溶接船の工作上最も注意しなければならないものの一つである。割れは、その他の要因で発生することもあるが、最も大きな要因は、溶接される材料の特性である。従って、材料を選択することが重要な問題となってくる。これに関する説明が指導書「1.2.2溶接性」にされている。要約すると、

a) 炭素当量がおよそ0.4%以下なら割れが起こることは少ない。

 

 

 

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