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7.2 提言

SARTは国際海事機関(IMO)で採択された「捜索救助作業に利用するための生存艇用レーダトランスポンダの性能基準」決議A604(15)で、

・動作温度の範囲を-20℃〜55℃とすること

・取り付けたときの海面高を1m以上とすること

・送受信には水平偏波を使用すること

などの基本的な性能が定められている。詳細な技術特性はITU-Rの規格で定められている。

統計的資料や実験観測結果を踏まえ、これらの基本的な性能項目を見直し、変更することでSARTの小型化と低廉化による普及を図り、海難の発生後に早期に救助できる可能性が増大するものと考える。

検討を行ってきた研究成果に基づいて次の項目について提言したい。

・SARTの使用実態に沿った電池の能力を見直す必要性があること

・航行区域に対応したSARTの選択が普及に有効であること

・円偏波方式等での送受信を認めるよう水平偏波での送受信に限定せず、水平偏波成分が半分量含まれれば良いこと

 

7.2.1 「SARTの使用実態に沿った電池」の能力を見直す必要性

平成10年度の本報告書で、海上保安庁の白書から検討した結果、海難の「発生から関知までの時間」は、1980年代後半でも30時間で95%までが関知されることが推測されることを述べた。現在ではEPIRBも利用出来るので「発生から関知までの時間」は大きく改善されている。EPIRBが普及していない1980年代後半を仮定しても、48時間待ち受けて8時間作動する形式のSARTは有効である。SARTが小型化され、普及すれば遭難時の救命活動に大きな効果が期待できると考える。遠洋海域を航行する船舶には96時間待ち受け型のSARTを搭載させるように措置する2種類の型式の承認は検討に値するものと考えられる。平成12年12月に行われた海上実験において、航空機による捜索は発信地点から30海里以上も到達した実績が得られたことを第6章で報告した。このように広範囲に信号が到達することを考慮すると、SARTの適切な使用とSARTの映像監視に適するように航空機搭載レーダを使用することで、航空機を主たる初期捜索の手段とする現在の救難システムで一層の救助確率の向上が期待できる。

 

7.2.2 「航行区域に対応したSART」の選択

平成10年度の本報告書で、海上保安庁の白書から資料で検討した結果、「距岸別要救助海難発生頻度の累積百分率からは、90%が距岸12海里までの範囲で発生し、95%強が50海里までの範囲で発生している」ことを報告した。

 

 

 

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