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6.3 考察

円偏波SARTと水平偏波SARTの受信状況について水槽実験での結果を踏まえながら海上での比較実験を行った。実験は船舶、航空機および陸上に設置したレーダからの観測の全てを一日で行ったために、観測する項目を絞って実施することとなった。そのために水平偏波SART、海面高が低い0.3mのSARTおよび航空機の飛行高度を変更した場合の状況変化などもう少しデータを収集できれば、詳細な比較評価が可能であった。実験計画は綿密な時間割に従って遅れることなく実行できたが、今後さらに詳細なデータの収集を行いたいと考えている。

実験観測結果については、円偏波SARTは予測された3dBの受信電力の低下もほとんど観測されず、偏波が旋回していることが海面反射波の干渉による受信電力の極小化を抑える効果となって現れた。安定して応答する特性は、水槽実験での視認観測と同様であった。その結果、海上実験においても円偏波SARTは応答の安定性に優れており、船舶およびで陸上レーダでの視認観測においてもレーダアンテナの旋回毎に安定に見える点で優位性が認識された。さらに陸上に設置したレーダでの受信電力の計測結果からは、受信電力の信号強度パターンが約3mの海上高に設置した水平偏波と同等強度の受信電力が得られていることが分かった。これは円偏波の場合、海面での反射係数が水平偏波とは異なるため海面反射波の干渉状況が変わり、結果として遠方での受信電力が増大したことにある。

同様の事実は、船舶からの視覚的観測結果においても現れており、

・水平偏波SARTは「かすかに見える」の状態が11.5海里であり、

・一方、円偏波SARTは「注意すると信号が見える」の状態が14海里であった。

SARTはどちらも海面高1m、船舶側のレーダアンテナの海面高は27.3mであったのでレーダ水平線は13.8海里となる。つまり、円偏波SARTはレーダ水平線による限界まで視認できたことになる。

ちなみに受信電力強度を水平偏波および円偏波の場合について、陸上レーダのディジタルデータによる定量的観測と評価(6.2.3参照)により計算した結果を図6.3-1および図6.3-2に示す。

この計算結果に関して次の仮定で観測結果と比較する。計算結果と観測結果はほぼ一致する結果となる。

・観測に使用されたレーダの最小受信感度をPPI映像での積分効果による信号対雑音比の改善を含めて-100dbmと設定する。

・また、波浪等によるSARTや船舶の波浪による上下動を考慮して若干の距離の伸びを考慮する。

 

 

 

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