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その検討過程の中で、

(1) 小型船用SARTの48時間待ち受け/8時間作動とすることで電池のサイズを小型化できる利点があり、それに併せて全体を小型軽量化する方向で検討した。

(2) 電池は低温時において電気化学反応が極めて不活性化するために電池の能力が低下する。従って、作動させる温度範囲を限定すれば小型で低廉なSARTの開発が容易である。

(3) 海難は90%が距岸12海里未満で起こっており、95%以下は同50海里で起こっている。

(4) 距岸12海里の海域での海難には携帯電話でも有効なことがあり、小型漁船やプレジャーボートでは防水型携帯電話を使用している現状なども考慮すべきである。

などの議論が重ねられてきた。

SARTの小型軽量化は、小型で高容量の電池の選定にある。各種の電池を調査したところ、塩化チオニールリチウム電池が適していると思われたが、今回調査した小型の電池では力タログに記載されていなかった低温時での連続大電流作動時(現状のSARTモジュールを連続受信作動させるための電流)の電池容量が、-10℃以下では極めて低下することが判明した。しかし、塩化チオニールリチウム電池の常温時における高容量で小型である特性は優れており、使用方法や装着方法で温度特性の補償を行うことで使用が可能である。現在使用されているリチウム電池は低温時の特性がよいことにあるが、身体への電池の装着で温度の低下を防ぐことで一般に市販されているカメラ用の電池を使用する簡便なSARTの製作も可能と考えられる。

SARTの使用環境に関して、「-20℃から55℃で作動すること」と一律に定めたことで、使用可能な電池が制限される結果となったが、使用環境の実態に見合った温度範囲の性能基準の検討が必要である。さらに、電池を小型化できるように受信待ち受け時の省電力化と内部で使用されているDC-DCコンバータ(電池の電圧を定電圧化して供給する回路)を不要とする回路設計で電力の利用効率を高める工夫などを行って、携帯電話のような簡便さで使用できるSARTへの展開までを視野に入れ、広く普及することが海難発生時の敏速な救助活動に有効である。

 

5.4 円偏波SARTの検討

レーダー画面上におけるSARTの視認性は、海面の状態によって大きな影響を受ける。小さな救命いかだ等に装備したSARTは波浪により大きな動揺が発生し、アンテナ指向性のずれによる探知距離の低下や波浪により電波が遮断されることによる覆域はずれ等が発生し、SARTはレーダー波に対してある確立で反応しているものと考えられる。

従来のSARTの偏波面は、9GHz帯の航海用レーダー及び巡視船等の捜索レーダーの偏波面に合わせて水平偏波を採用している。

 

 

 

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