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はじめに

 

本書は、平成12年度に日本財団の助成を受け実施した海上防災訓練の充実強化事業の報告書である。

 

海上災害防止センター(以下「センター」という。)は、その設立目的を達成するため、平成13年1月現在、全国の主要港湾に所在する146の業者及び外洋対応としての12の業者を契約防災措置実施者(以下「契防者」という。)として契約を結び、油等の流出事故が発生した際は、センターの指令により直ちに防除活動が実施できるように体制を整備しているが、契防者には、港湾運送、港湾曳船、港湾土木を本業とする業者が多く、防災事業を専業とする業者は極めて少ないのが現状である。

このような状況に対し、これまでセンターとしては契防者等が、防除作業を迅速、的確に実施する能力を保持するために、各現地において実際に即した流出油事故を想定して海上防災訓練を実施し、排出油等の防除に必要な知識及び技術の習得並びにその錬磨向上を図ってきたところである。

しかしながら、これまで各地で実施してきた訓練においては参加船艇及び人員の連携に重点が置かれていたことから、高度な技能の修得には時間的、設備的に制約があり、大規模災害現場において指揮ができるエキスパートを育成するには至っていなかった。

このようななかで平成9年に発生したナホトカ号事故では、冬季の日本海で防除措置の極めて困難な高粘度化した流出油が大量に沿岸に接近・漂着し、さらに被災現場が広域に及んだことから、防除措置現場において高度な技能が求められながら、これらを習得した者の不足により被害の拡大を招き、人材育成の必要性が痛感されたところである。

このようなことからセンターにおいても防除措置体制の主体である契防者において高度な技能を有する人材を育成することが急務となってきたところである。

 

横須賀のセンター研修所では平成8年度から新設の油防除訓練施設において実際に油を使用し、実経験を取り入れた実践的な油防除訓練を実施しており、この施設を活用し契防者を対象とした高度な防除技術の習得を目的とした訓練を実施することが可能となってきたことから、各契防者から選抜された者を横須賀に招聘し、同研修所で集中的に訓練を行うことで人材育成が効率的に実施できることとなり、これにより大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることとした。

また、実際に現地で油防除に従事する多数の者を対象とした地域に即した防除措置の指導は、今後とも欠かせないものであり、センター派遣講師による油防除技術等に関する研修会を開催し、地域における海上防災能力の向上を図ることとした。

 

 

 

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