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装備品などの取り付け位置を決めるとき、「どの階(または部屋)」の「何番フレームから前(または後ろ)へいくら」「床(または船の中心線)からいくら」といった具合に、図面で寸法を指定しておけばよいので、船の番地のようなものです。たいていのものは、これで間に合いますが例外もあります。そのひとつが、先に出されてきた車両スペースの線路です。

 

車両スペースにある線路

車両スペースの床は横梁で支えられています。横梁は両端がフレームとつながっているので、フレーム番号がそのまま利用できます。

「線路」は4線が平行に並んでいますが、船尾の方は陸上の可動橋にあわせるため、カーブを描きながら間隔を狭めて3線になっています。このカーブは半径が150〜400.1メートルもある大きなものの組合せです。現場ではこんな大きいコンパスを使うわけにはいきません。そこで船の中心線からカーブまでの距離を、各フレーム番号(横梁)ごとに計算して出し、これを元に実際の床上にマークしていけば、問題はないはずです。

ところが困ったことには、現実にはこの横梁、なかなか図面通りの位置に納まってくれません。横梁の間隔が、先の「ブロックと車両数」のところで述べたように、溶接構造のため、狭くなったり広くなったりしているのです。

一方、計算した指示寸法は、1ミリ刻みのデリケートなものですから、ずれた横梁の位置で寸法を出したのではレールは格好よく曲がってくれません。

結局、床の最後端から、現実の横梁とは関係なく、あらためて計画通りの間隔で横梁の位置を書き出し、その上にマークすることになります。

 

車両スペースは一見広々としていますが、ほとんどがこの目に見えない建築限界に占められているのです。

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連絡船内部に格納された貨物車両

 

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可動橋を渡って連絡船内部に運ばれていく貨物車両

 

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船体の断面図

左側の車両スペースは車両が入る前で、右側のオレンジ色部分が建築限界範囲になる

 

 

 

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