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船の科学館ものしりシート

 事業名 基盤整備
 団体名 日本海事科学振興財団 注目度注目度5


このことから、元はロンドンの貴金属商R&Cギャラード社が制作した製造原価をカップの名前にした「100ギニー・カップ」は、優勝した船の名前をとって、アメリカズ・カップと呼ばれるようになったのです。“アメリカ”がイギリスのヨット界に与えた影響は大変大きなものでした。“アメリカ”は鋭い船首と広い船幅、ブームに固定された機械紡(つむ)ぎの木綿(もめん)のセイル等の特徴を持ち、どの方向の風に対しても速いものでした。これに対しイギリスの船は、船首が丸く幅が狭く、リグが複雑でルーズフットのため風が当たると伸びてしまうリネンのセイルを使っていました。翌年のシーズンにはイギリスの一流のヨット乗りは、船を造り替え、“アメリカ”と同じようなリグに代え、そしてアメリカ人の帆走技術を身につけるようになっていたくらいです。

近年、アメリカズ・カップの予選レースが開催されていますが、これは1983年(昭和58)、5カ国のチームが同時に“アメリカ”に挑戦したことにより、アメリカズ・カップの挑戦艇を決定する予選シリーズを急遽開催する必要があったためで、これがルイ・ヴィトンカップの始まりです。このレースの勝者がアメリカズ・カップに挑戦する権利を獲得することができ、第一回目のルイ・ヴィトンカップの勝者“オーストラリアII”はアメリカズカップを獲得し、132年間にも及ぶアメリカの独走態勢をうち破りました。これはアメリカが132年間手にしてきたカップが、遂にアメリカを離れるときでもありました。“オーストラリアII”が優勝したとき、世界中が沸き返りました。ホワイトハウスにオーストラリアチームを招いたとき、レーガン大統領は「カップの台座の留め金はあまり堅くしないように。すぐにアメリカが取り返すのだから(NYYCはカップの台座をボルトで固定していた事をふまえて)」と言ったそうです。

 

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「アメリカズ・カップ本戦」銭谷誠康画

 

(2) アメリカズ・カップ参加の意外な人物

サー・トーマス・リプトンは、世界で最も有名な紅茶会社の一つの創設者です。彼はアイルランドの出身で、16歳でアメリカに渡り、電車の運転手や農場で働らいた後、20代半ばで帰国します。帰国後、スコットランドで小さな食料品店を開いた彼は、紅茶の取引で商才を発揮し、リプトンの名がイギリスまで響きわたるほどに事業を発展させ、40代後半にはナイトの称号を得ます。彼は後のエドワード七世となった当時の皇太子と非常に親しく、皇太子はヨットを好み、アメリカズカップ奪還(だっかん)に意欲を燃やしていたそうです。リプトン自身はヨットにそれほど興味を抱いていたわけではなかったのですが、皇太子に影響され、1899年(明治32)の第10回大会に“シャムロック”というヨットで初挑戦を果たします。彼の初勝利は第4回目のチャレンジでやってきます。それは第一レースにおいて“レゾリュート”に故障が生じ、リタイアしたため“シャムロック4”が一勝をものにしたレースです。しかしリプトンはこのような勝ち方には満足せず、再レースを提案したそうです。NYYCは故障もレースのうちとし、レースはリプトンの勝ちとなりました。最後の挑戦は5回目となる1930年(昭和5)、この時点で彼は既に80歳を越えていました。リプトンはそのスポーツマンシップと温厚な人柄から多くのアメリカ人に好かれ、ニューヨークタイムスのキャンペーンのもと、市民が1ドルずつお金を出し合い、リプトンのために彼の名を刻んだティファニー貴金属店デザインのカップを贈りました。後年このカップを記念するレースが創出されました。その名も「リプトン・カップ・レース」です。

 

 

 

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