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2. 灯台

 

(1) 灯台の歴史

灯台の歴史はとても古く、記録に残る最初の灯台は紀元前7世紀に、航海の安全のためナイル河口の寺院の塔上に火が焚(た)かれたというものです。この寺院では僧侶が火を守り、船乗りたちにシーマンシップや天文学などを教えたといわれます。紀元前660年(神武(じんむ)天皇時代)にギリシアの詩人レスチェスは、「トロイの岬に灯がともされ、ダーダネルス海峡に向かう船の案内となった」と語っています。又、古代七不思議といわれる話の中に灯台についての記述が2つあり、その1つ目のロードス島の巨人は、紀元前300年(孝安(こうあん)天皇時代)、地中海のロードス島の港の入口に、高さ30メートルのブロンズ製の像が建てられていたというものです。この像はマケドニア軍の攻撃に打ち勝ったロードス島の住人が記念に造ったとされる太陽神ヘリオスの巨大な神像で港口の要塞と灯台を兼ねており、その頂の灯火により船は港内に導かれました。2つ目は灯台の語源にもなっているファロス:Pharosの灯台です。アレクサンドリアの北にあるファロス島に造られたという反射鏡(はんしゃきょう)を利用した世界最初の大灯台で、今でもファロス(またはファーラ)は灯台を表わす言葉として残されています。紀元前279年頃(孝霊(こうれい)天皇時代)完成しました。巨大な大理石の土台の上に八角形の塔が立ち、最上段は円筒になっていて、その高さ150メートルの上で焚かれた光は海上28海里(かいり)を隔(へだ)てて見えたということです。では、日本で最古の灯台はというと、続日本書紀に帰国する遣唐使節船の目印に、九州各地の峰(みね)に篝火(かがりび)を焚いたとあるものだと思われます。承和(しょうわ)6年(839)のことです。また、日本で最も古い洋式灯台は、明治元年(1868)建造の観音崎(かんのんざき)灯台です。

 

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(2) 灯台の区別

日本各地にあるそれぞれの灯台ごとに、様々な灯質が定められて、多数の灯りがあっても容易に判別できるよう、白、赤、緑のフィルターによって異なった光が造られ、点滅のバリエーションを加えています。この灯台ごとの光は海図に明記されており、「Alt.w.r.10sec.49m.19M」とあった場合、「10秒間に白光と紅光が交互に一回ずつ点滅する、灯光(とうこう)の高さ49メートル、光達距離19マイル」という意味になります。この光達(こうたつ)距離は、光が到達する最大距離をいい光学的光達距離(灯火の光度、大気の透過率及び観測者の目における照度(しょうど)の域値の3要素によって決まる。)と地理学的光達距離(地球の曲率、大気による光の屈折、灯火及び眼高の4要素により決める距離)の2つがあります。しかし、この光達距離は必ずしも数字通りに見えるわけではありません。なぜなら、大気の状態や気象、付近の光源や背後の灯光による影響があるためです。

 

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灯台の灯質について

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