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3. 新しい水面の利用

海に四方を囲まれた日本には、200海里水域面積(かいりすいいきめんせき)が約451万平方キロメートルあります。これは日本の陸地総面積の約12倍もの広さです。さらに日本では、海岸線が長いこと、水深20メートル以下の海域が多いことなどから、江戸時代から埋め立てが行われてきました。近代に入り工業化が一段と進み、埋め立ての速度は急激に加速しました。そして今世紀末には、飽和状態(ほうわじょうたい)になることが予想されています。現在埋め立てに代わる新しい海洋の利用方法として、海面を利用する浮体構造物(ふたいこうぞうぶつ)・メガフロートが注目をあびています。将来的にはメガフロートは空港やヘリポート・避難所・レジャー観光施設・エネルギー関連施設など幅広い分野での利用が期待されています。

 

4. メガフロート

メガフロートは、ギリシャ語で「巨大」という意味のMEGAと、英語の「浮体」という意味のFLAOTを組み合わせた造語で、巨大浮体構造物という意味です。実は、メガフロートは小さな(といっても、長さ100メートル×幅20メートル×深さ2メートルの大きな箱です。)浮体ユニットと呼ばれる部品をいくつもつなぎ合わせて、ひとつの大きなフロートになっています。そして、現在実験で使われている浮体構造物・メガフロートは、長さ300メートル、幅60メートル、深さ2メートルもの大きさになっていて、その重さはなんと8,000トンもあります。なぜこの様な鉄でできた大きな箱が海の上に浮かび、その上に空港やゴミ処理場などの大きな建物を乗せられるのでしょうか。この一つ一つの浮体ユニットの中は空洞になっていて、そこに空気がたくさんあるので浮力が働くためです。

それでは、浮体構造物は埋め立てなどに比べて生態系への影響が少ないとか、海の潮の流れをじゃましないというようなことで期待されていますが、この様な大きな鉄の箱を海に浮かべても、鉄が溶けだしたりして生物への影響は出ないのでしょうか。これには浮体ユニットにチタンクラッド鋼薄板を採用することで対応しています。チタンは飛行機や潜水調査船(せんすいちょうさせん)にも使われる程丈夫で、海水を使った発電所や海水を真水に変えるプラントでも使われていますが腐食(ふしょく)は全く認められていません。現在、神奈川県横須賀市沖の海上で、耐久性や潮の流れ・生物系などへの影響など、さまざまな計測・実験が行われています。

また、メガフロートの特徴として、1]水深に関係なく海域を利用できる、2]地震による影響がほとんどない、3]地盤沈下による影響を生じない、4]拡張や移動が容易であるなどがあげられます。陸上からの交通手段としては、船舶やヘリコプターの利用の他橋や道路、海中トンネルなどが考えられています。

 

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洋上接合実験(9個の浮体ユニットが接合された様子)

 

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メガフロート空港予想図

写真提供:メガフロート技術研究組合

 

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資料提供:メガフロート技術研究組合

 

 

 

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