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「近代化」の中での石田梅岩

石田梅岩と彼の運動を既成の歴史的分類から救い出すことは有効なことであると思われます。私は梅岩の時代は、私たちの時代と同時代であるということを強調したいと思います。石田梅岩の経験はずっと近年に日本、そして他の国々に生きた多くの人々が得た経験と同じなのです。十八世紀の日本では「近代への移行」はすでに始まっていました。日本は当時のヨーロッパのどの国とも同じくらい都市化が進み、また同じような高い識字率をもっていました。また、十八世紀の日本は、西洋に存在したような進歩した資本主義経済をもっていたと言えると思います。徳川時代の日本を「封建社会」あるいは「新封建社会」と称することによって、この社会の現実は解明されるのではなく、不明瞭なものになってしまいました。十八世紀には通貨経済は大都市に限らず、地方までも浸透していました。この時代には「伝統的な農村」は、山岳地帯や島々などの人里離れた地域だけに存在するものとなっていました。関西と関東では、農業は圧倒的に市場(しじょう)を向いていたのです。

 

 

 

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