自然に対するオソレとツツシミは古くから日本人のなかにうけつがれてきましたが、それはあくまでも受け身で、みずからが自然を守り活かし、環境の汚染を防ぐ積極的な行動はあまり具体的には展開しませんでした。それぞれの家庭・学校・職場など、まさに地域を場とし地域に奉仕する、地域に根ざした新しい社会環境の創造のなかで、個と普遍が合体します。
「天の心は人なり、人の心は天なり」という梅岩の指摘を、現在に生かし、未来へ発展させてゆきたいものです。ここで改めて考えてみなければならないのは、十九世紀の前半、あれほどにひろがり、あれほどに多くの支持者や共鳴者をえていた心学が、なぜ日本の近代化が展開してゆくなかで衰退していったのかという問題です。その理由の究明は、今後の心学の展開がいかにあるべきかという問題を明らかにしてゆくためにも避けるわけにはまいりません。討論のなかでもその点をかなり議論しましたが、若干の補足をしたいと思います。